転校生

 朝目覚めて俺は居なくなったことも忘れくろを探した。だがもちろん部屋にもうくろが居るはずもない。

「あ、そういえばもうどっか行っちゃったんだよな」

 俺のそんな悲しい嘆きを聞いてくれる者はもう居ない。

「よし!切り替えよう!」

 そう言って俺は自分の頬を強く叩いて気合いを入れた。

 だがやはり物足りない…それでも俺は何とか切り替えて学校へ行く準備をした。


 制服に着替えて学校の授業道具を一式もって俺は何も考えられない様に全力で走って学校にいった。その時何度かすれ違うカラスを見た時に胸に溢れる気持ちを抑える様にどんどんどんどん早く。

 いつも時間に余裕がない状況での登校だったがこの日はとても早くに学校についた。

 まだ生徒は誰も居ない。その一人の空間がまた俺の寂しさを強く溢れさせていた…


 それから十分程たちやっと二番目の生徒が来た。そいつも俺がこんな時間に来ている事に驚いていたが仲が良い訳でもなく特に会話などはしない。

 それから登校ピークの時間になりずらずらと生徒が入ってくる。そんな生徒達はみな今日急に来る事が決まったらしい転校生について話していた。

 その時の俺は転校生になんか気にならないほど落ち込んでいて周りに細かいことを聞いてはいなかった。

 その転校生が自分の追い求めていたかつての友だということも知らずに…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る