第11話
「こんにちわ。」
「…真彩ならしばらく休みですよ。」
伸也は真彩と枝理が働くスーパーに来ていた。
「…そうですか。」
「買い物しに来たんじゃないんですか?」
「…いえ。…はい。」
「男ならハッキリして下さい。ましてや顔が良いのにモゴモゴするのは気持ち悪いだけですよ。」
「…バイト先にも居なかったから。」
「少し待っていてもらえますか?」
「…はい。」
枝理は一度時計を見たかと思うと裏方に下がった。
そして、しばらくすると私服で出て来た。
「もう仕事終わりだったんで。これでゆっくり話せますよ。」
「…どうして?」
「私は誰がどう足掻こうと真彩の見方です。でも、あの子が頼りたいのは男性だって知ってるから。女の子なら誰でもそうでしょ?」
「何か教えてもらえるんですか?」
「それは貴方次第でしょ?私は真彩と違って甘くはないです。」
2人はとりあえず場所を移動し近くのカフェに行った。
「先に1つだけ教えて下さい。」
「はい。」
「真彩に近付いて何するつもりですか?」
「何とは?」
「普通は好きとかあるでしょ?」
「…君に言わないとダメ?」
「ちゃんとした気持ちがあるなら良いけど中途半端に真彩に近付いて傷付けるなら許さない。」
枝理は伸也を睨んだ。
「…内容は言えないけど、佐原の言葉で救われたから困ってるなら助けたい。それだけだよ。」
「恋愛感情があるように見えたけど?」
「…良く疑われるんだ。誰にでも優しいからって。俺も見た目で近寄ってくるヤツを避けるためにわざとしてる時はあるよ。」
「…なら近付かないであげてよ。」
「何で!?」
「真彩を守りたいから。それだけ。内容は何も教えられない。」
「感謝しても仕切れない相手っているじゃん。」
「いるよ。先輩が言ってることも分かる。けど私は…全部知ってるから尚更。先輩の見方にはなれないよ。」
「もしそこに恋愛感情があれば良いの?」
「そう言う問題じゃない。簡単に言わないで。真彩に恋愛感情を持たせるって事は大きな事なの。何の事情も知らないで安易に語らないで。」
枝理は声が震えていた。
「でも、なら尚更。山田しかそれを知らないなら崩れるわけにはいかないだろ?」
「いたっ。枝理さん!!」
「弟くん?」
「やっと見付けた。仕事場に行ったら、帰ったって聞いて。…真山さん?」
「よっ。元気そうだな。」
「はい。それより姉が最近逢った綺麗な人って知りませんか!?」
「綺麗な人?女性とか?」
「分かんないんです…。」
「外で話そう。」
「…はい。」
2人は飲み物を一気に飲み干し、お会計を済ませ真彩の弟と外に出た。
「何があったの?」
伸也は気を使い、少し離れた場所でタバコを吸っている。
「姉。ガンだったんです。子宮頸ガン。手術も終えて、陽性ではあったんですけど…魂が抜けてしまってるし、しばらくは安静って先生から言われたので。」
「実家?」
「祖父母も亡くなり前より落ち着いたので今は実家に居ます。家もまだありますけど目を離したら自殺しそうで…。」
「どこまで…。」
「枝理さん。一度話に来てもらえませんか?ボクは何度も姉に助けられました。仕事も学校も。今の生活も姉が居なかったら出来なかったことです。でも僕は姉のこと何も知らない…。」
「弟くん。…私はいつでも真彩の力になれる。でも、その…。あっ…。」
「え?」
「その綺麗な人って…。」
「たまに言ってるんです。外を見ながら“あの綺麗な人に会いたい”って。」
枝理は一度、伸也の方を見て少し考えた。
「それって。」
「知ってるんですか!?教えて下さい!!」
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