第7話
「アヤ。ごめん。」
「社長。珍しい。すぐ準備するね-。」
「ありがとう。」
真彩は一度、裏方に入り大急ぎで準備した後、店内に出て来た。
「アヤ。出ます。」
バタバタ動き回るキャストやボーイ。
もちろん真彩も色んな所にヘルプとして挨拶に回る。
ドタバタが落ち着いた時は、あれから3時間も経っていた。
「アヤ。助かったよ。」
「こちらこそ。何も考えたくなかったから、ちょうど良かったんだ。」
「アヤさん。」
「はーい。」
真彩が裏から返事を返すとボーイが1人入ってきた。
「あの…ご指名なんですけど、先日の方なんです。どうされますか?」
「…。」
「アヤ。ネットに出勤は出してないから出なくてもいいよ。」
「大丈夫。直したら行くね。」
「アヤ…。」
「いつまでも逃げてるわけにもいかないみたいだから。」
真彩は一呼吸置き、化粧を直すと表に出て行った。
「こんばんわ。」
「…佐原。」
「出来たらアヤって呼んでもらえますか?」
「ごめん。もう話せないかと思ってたけど…。」
「特に貴方が、こちらに何かしたわけではないので。どうかしたんですか?お酒も飲めないのに。」
「あっ。…いや。あれ?飲めない話した?」
「いいえ。ですが、その程度見抜けなくてお店のトップなんて出来ませんよ。」
「そっか。中学の時と変わった?」
「特に変わりないと思いますよ。すいません。人の顔を覚えるのは苦手で出会ってたみたいなんですけど覚えてないんです。」
「そっか。…中学の時さ。」
「はい。」
「さっ…アヤが言ったんだよ。ぶれない芯持ってるの凄いねって。」
「…はい。」
真彩は記憶を探るが、思い出せないようだ。
「そこまで話せる仲でもなかったし。俺あの時、見た目で寄ってくる人しかいなかったから。」
「イケメンですからね。」
「相変わらずストレートだな。」
「昔を知ってる方に特に隠す必要もないと思いますので、気に障ったのならすいません。」
「いや。大丈夫。」
「まともに話せる方は居ませんか?」
「何を?」
「色々と。ストレスを感じにくいとは言え、溜まるモノは溜まります。身内にも話されない感じ?イメージ?だったので。」
「エスパー?」
「何でですか。奥さんや店長さんとの関係や先日、来られた上司?の方々との対応を見て何となくです。私が言ったのであれば同じ事ですが綺麗なぶれない芯は変わらないみたいですが、細すぎて折れそうですよ。」
「失礼します。お時間となりますが、どうされますか?」
「…あっ。」
「またいつでも話せますよ。」
真彩は小さなカバンから名刺を取り出し、伸也に渡した。
「チェック。」
「はい。」
ボーイが下がり、しばらくして伝票を持ってきた。
伸也がお金を払い終え、真彩は外まで見送った。
「一度、ご飯でも…。」
「携帯に連絡ください。予定を覚えてないので返答できません。」
「ごめん…。」
分かりやすく肩を落とす伸也。
「真山さん。断ってるわけじゃないです。本当に予定をいつも詰めているので覚えてないだけなんです。いつでもメールでも電話でもして下さい。ちゃんとお返事はします。」
「ありがとう。」
伸也は笑顔で帰って行き、真彩は裏方に戻った。
そこには休憩してる他の女の子が居た。
「アヤさん。さっきの人めちゃくちゃカッコいいですね。」
「そうだね。」
「興味ないなら狙っちゃおうかな-。」
「お好きにどうぞ。」
真彩はそれだけ言うと事務所に入った。
「アヤ。お疲れ。」
そこに居たのは店長と事務をしている男性スタッフの2名。
「ため息付いていい?」
「どうぞ。」
「はぁーあ。」
真彩は珍しく、店内に聞こえるほど大きな声でため息をついた。
「ありがとう。」
「アヤ。安定したから大丈夫だよ。ありがとう。」
「なら上がるね。」
真彩は帰宅準備を済ませ、ボーイの車で家に帰った。
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