第6話


「いらっしゃいませ。」


誰もいないであろう時間帯。

静かな本屋に店員の声が響く。


「新しい本欲しいからDVD見てて。」


「分かった。携帯は?」


「持ってるよ。」


「じゃあ後でね。」


DVDは2階。本は1階にある。

2人は別れた。


真彩はたくさんの趣味を持つ。

その中の1つが読書。

ノンフィクションやエッセイ。一時期目指していたデザイナー関係の本を読み漁っている


「ふー。大丈夫。大丈夫。」


大きな深呼吸をして今にも泣きそうな自分に言い聞かせる。


そんな時…。

パシッ…。


誰かに手首を捕まれた。


「逃げないで。俺、佐原と話したい。」


そこに居たのは伸也だった。


真彩は一度下を向くと、バレない程度の深呼吸をして向き直った。


「何か用ですか?」『よし仮面被れた。』


「いや。特に用って訳じゃないんだけど話したくて。…ノンフィクション好きなの?」


「一応好きですよ。頑張ってる人ってカッコいいじゃないですか。」


「変わらないね。」


「何がですか?」


「中学の頃と。」


「ごめんなさい。友達には出会ってたと言われたんですけど、人の顔覚えるの苦手なので覚えてないんです。」


「…そっか。」


「友達待たせてるので失礼しますね。」


「あのさ。」


「はい?」


「友達になろうよ。」


「…はい。分かりました。」


「また店も来てくれるよね?」


「…はい。」


真彩は逃げるように枝理の元に向かった。



「枝理。」


「真彩。早かったね。本は?」


「特になかったから。」


「そっか。久しぶりに飲む?」


「枝理が飲みたいなら付き合うよ。」


「…真彩が乗り気じゃないなら良いよ-。」


適当にDVDを借りて2人は帰った。


家に着くなり、真彩は化粧を落としてお風呂へ。枝理は何ら変わりなくソファーでくつろいでいる。


真彩がお風呂から上がると目が赤くなっていた。

枝理はそれに気付いたが、真彩が話さないならと何も聞かずに、いつもと変わらない態度でいた。


昼頃までDVDを見て、2人はいつの間にか眠ってしまっていた。


【もしもし。】


夕方になり、先に起きたのは電話が鳴った真彩。


【アヤ。ごめん。3人飛んだんだけど今から来れる?】


【良いよ。】


【本当ごめん。】


【そっち行ってから準備でも良い?】


【全然大丈夫。1時間とかで大丈夫だから。】


【車は?】


【向かわせてる!!】


【おっけー。】


電話を切り、眠い目をこすりながら支度を始めた。


「真彩?」


「ごめん。起こした?」


「良いよ。バイト?」


「そう。ドタキャン。寝てて良いよ。早めには帰ってくるし。」


「なら、そーする。」


再び眠る枝理。


真彩の準備が終わる頃、車が到着して店に急いだ。


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