第4話


「こんにちわ。」


今日は珍しく人が少なかった。


「真彩ちゃん。いらっしゃい。いつもありがとう。」


「奥さん。こんにちわ。今日は少ないんですね。」


「学生さん試験だって。」


「そんな時期ですか。」


「そうなのよ。それに息子が帰ってきたから、それも関係してるかもしれないわ。」


「息子さんですか?」


「そう。アパレルの店長してたんだけどね。継ぐって約束してて帰ってきたの。」


「そうなんですか。」


「真彩ちゃんの1個上よ。顔見たら知ってるんじゃない?」


「どうでしょう。私記憶力ないので。」


真彩は目的のボールペンを探し、レジで世間話。枝理は店内をうろうろしている。


奥さんも店長も真彩が憧れを抱いていることは知っているし、元々弟がバイトしていたこともあり、大抵のことは話してくれる。


「おかえりなさい。」


「店長さん。こんにちわ。」


「いつもありがとうございます。」


店長さんは一言交わすと、裏方に引っ込んだ。

人見知りが激しいので中々話せないのだ。

だが、それも真彩の尊敬する一部になっている。


「佐原?」


「おかえり。伸也。」


「…。」


真彩は聞き覚えのある声に固まってしまった。


「真彩ちゃん。言ってた息子よ。」


「…あっ。すいません。私この後、バイトでした。失礼しますね。」


「そう?また来てね。」


「はい。枝理。行こう。」


真彩は足早に店を後にした。



車に乗り込み、一緒に来たので家まで送る枝理。


「真彩。あの人?」


「…。」


真彩は小さく頷いた。


「…枝理。知ってる?」


「保健室登校してた人だよ?覚えてない?」


「…うん。」


「真彩さ。精神的に弱かった美保と仲良かったでしょ?よく話に行ってたじゃん。」


「それは覚えてるよ。結婚したから話さなくなったけど。」


「そこにいた人だよ。一度だけ見たことある。イケメンだから覚えてた。」


「さすが。」


「真彩?」


「大丈夫。」


真彩は凍り付いた笑顔で車を降り、家に入っていった。



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