第3話
次の日…。
いつもと変わりなく仕事を終え、枝理と昨日のカフェにいた。
「真彩から誘うの珍しいね。」
「…うん。」
「どした?」
「枝理。会いたくない人に会ったかもしれない。」
「どゆ事?」
「イケメン。」
「何か言われたの?」
「私だってバレた。今までは誰も気付かなかったのに。お父さんの職場の人とか、お姉の同期とかも来たけど…。」
「学生時代のクラスメイトってこと?」
「分かんない。年齢とか聞いてない。」
「真彩。もう良いんじゃない?」
「何が?」
「バイトの方は辞めてもさ。確かに。皆変だとか言うし、パートからは嫌われてるし、無視されたりとか当たり前だけど。所詮、皮肉でしょ?真彩ほど頑張れないから八つ当たりしてるだけだよ。」
「違うよ。私まだ全然変われてない。顔が変わって私じゃない私を演じて。ただ楽してるだけ。小学校から何も変わってない。ただ臆病で厄介でバカな女でしかないんだよ。皆が仮面って呼んでるモノを被らないと話なんてまともに出来ない。」
「まさかとは思うけど仮面壊された?」
「…うん。」
真彩は休日も整形メイクをしているので顔が変わることは枝理も知っている。
「しばらく一緒にいよ。実家に戻るつもりもないんでしょ?」
「…戻れないよ。」
「ならしばらく一緒に暮らそうよ。ね?」
「…大丈夫。話したらスッキリした。今日もバイトだから。帰ろう。」
「分かった。」
枝理はいつも真彩のSOSを待っていた。
以前にも真彩の仮面を壊した男性は存在していた。
仲が良くて生まれて初めて好きかもと思えて、付き合ってもいた。
けれど1年も経たず別れた。
その理由を知るのは枝理だけ。
実家に頼りたくないのも機能不全家庭で育っていた真彩は、口を開けば愚痴しか言わない家族を嫌い、ケンカをして出て行ったのが原因。
何かとややこしい事しか抱えていない真彩を至って普通の家庭で育った枝理はいつも気にかけていた。
「あっ。ボールペン。」
「インク切れた?」
「付き合って。」
「良いよ。いつもの雑貨屋行く?」
「店長いるかな?」
真彩の表情が一気に明るくなった。
その雑貨店は学生時代から行っていて、元は弟のバイト先。
家族経営をしているお店で、評判も高く学生が帰る15時以降はいつも混み合っている。
真彩はそのお店の店長と奥さんに強い憧れを抱いていた。
足音から仕事が出来るオーラを放っているのにしっかり家のことをこなす奥さんと、真彩が目指すデザイナーの資格を持つ店長さん。
特に有名というわけではないが、調べた本にたまたま載っていて心惹かれた。
2人はカフェを出て、目的の雑貨店に向かった。
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