古代ギリシア その③
皆さんお待ちかねの? ヘタイラの回がとうとうやってきましたよ!
(多分)古代ギリシアの華たるヘタイラは、娼婦の階級社会のトップ。彼女たちは公的には何らの地位も持っていなかったけれど、男性たちの頭と心の中では、当時の他のどんな女性たちも及ばない地位を占めていました。なぜならヘタイラは古代ギリシアの女性の中で最も教養があり、なおかつ話し上手で当時の著名な男性――将軍、政治家、文人、芸術家といった人々を魅了してやまなかったからです。ヘタイラの中には、その像を神殿やその他の公共建築物に、それも高名な将軍や政治家の像のすぐ側に並べて置かれた人もいるのだとか。
高級なヘタイラになるにはおしゃれや化粧を頑張る他、男の心と欲望を察するだけでなく、時には客とウィットに富んだ会話を弾ませるなど、特別な訓練や経験が必要とされていました。で、そういった知識を伝授するための学校教育のようなことも行われていたそうです。現代には残っていないけれど、ヘタイラの手引き書のような物があったことが、当時の著作から察せられるそうな。また当然ながら、経験豊富なヘタイラほど代金は高くなります。
ヘタイラの一大中心地だったのはコリント市。コリントには「ヘタイラたちが力と心を合わせて一心に
高名な地理学者で、なおかつ歴史家であり哲学者でもあったストラボン曰く、コリントの神殿はアフロディーテに仕える娼婦を千人以上抱えていたそうなのです。娼婦は現代の人間が蝋燭を献じたり祈りを捧げたりするのとほとんど同じように、神殿に奉納されていたのだとか。
ただ、上記の「千人以上」という数字には、神殿が所有する奴隷の他にヘタイラも含まれていたそうです。じゃないと、流石に多すぎますものね。ただしヘタイラは奴隷娼婦と違って、売り上げの一部をアフロディーテの神殿に納めていたにすぎないのだとか。ヘタイラはあくまで、アフロディーテの巫女ではなく、アフロディーテに庇護されているにすぎない存在だったのだとか。でもヘタイラは、自分の仕事に宗教性という箔を付けるために、アフロディーテと何らかの繋がりを持とうしていたそうです。
ところで愛と美の女神であるアフロディーテは、愛欲を司る女神でもあります。つまり売春という他者の欲望を満たして彼に愉悦を与える行為も、この女神の許しがあって初めて認められたのです。なので、もしもある女性が自分の結婚持参金をアフロディーテに奉仕をする形の売春(売り上げの一部をアフロディーテの神殿に納めるということでしょうか?)で稼いだら、彼女は敬虔な行いをしたことになるし、その結婚は奨励されることになったそうです。
また、金のために身を売った女性が、売り上げの一部を宝石にして神殿に寄進したら、これもやっぱり敬虔な行いと見做されたそうです。なぜならそれは、女性の(=自分の、ということでしょうか)美と成熟と豊饒に対する、アフロディーテへのお礼だから。ま、何をもって敬虔とするかの基準など、時代と地域と文化によって異なって当然でしょう。
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