古代ギリシア その①

 ついに始まりました古代ギリシア編! ポルノグラフィーという言葉は「売春婦についての記述」という意味のギリシア語から来ているそうですから、期待が持てますね! 


 古代ギリシア人は売春に熱い関心を持っていて(←実際に本に書いていました)、売春や売春に関わる物事を記述するために、多様な言葉を発達させたそうです。例えば、pornoiポルノイという言葉は最下層の娼婦に対して使われ、それ以外の者たちに向かって使えば侮蔑と受け取られた。

 一方、文字通りの意味では「仲間」や「相手役」ほどの意味を持つhetairaへタイラは高級娼婦を指すのに使われていたそうな。で、この二つの間にも色々な名称があったそうです。肉きり人や橋の女に教区労働者、しけ込み。はたまた公共の女に走る人といった、まあまあ理解できなくもないものから、雌オオカミ、さいころ、仔馬、蠕動壺、地面をたたく奴、寝室用品などといった、ぶっとんだものまで、色々と。

 ……上記の後半の例、仔馬と寝室用品は、その表現に至るまでの過程を連想することもできます。雌オオカミも。でも、さいころとか蠕動壺とか地面をたたく奴とかは「は?」という感じになりませんか? 蠕動壺て。いや、ほんとは蠕動壺もその意図するところを理解できるんですよ? でも、あまりにもあけすけすぎるというか、もうちょっとオブラートに包んだ表現しても良かったんじゃなかろうかとか、色々なことを考えてしまう。

 あと「教区労働者」というワードからは、私はどうしてもキリスト教を連想してしまうし、現にウィキ大先生の「教区」のページでは古代ギリシアのことなんて一言も触れられていませんでした。でも、古代ギリシアにも神殿があったんだから、キリスト教の教区に該当する言葉が存在したのでしょうか。だったら古代ギリシアにも「教区労働者」に該当する言葉があってもおかしくない。それともこれは、ホセア王の悪夢再び? もしくは、(ギリシア語→英語→日本語)と翻訳を重ねるにつれて微妙な意味の違いが積み重なってしまった?(「売春の社会史」は英語で書かれた本の翻訳版です) 


 本の古代ギリシアの売春婦を指すワードの部分は「Sexual life in ancient Greece」という本を参考にしたそうなのですが、この本を入手して真実を確かめてみる気なんて、1mmも沸き起こりませんね! だいたい私も前の回で、ヤバめの誤字をやらかしてしまっていたから、これ以上この件について詮索する権利なんて持っていないのです。ちなみに私は、既婚者が強姦罪を犯した場合、「既婚者(犯人)の妻を被害者の父が合法的に~」が正しいところを「既婚者の妻が被害者の妻に合法的に~」としていました。……指摘されるまでこの誤字に気づかなかった自分が怖い。


※補足

 宮澄あおいさんが、


 ・「教区」はローマ時代の「管区」から来ているようで、徴税の管理区域を指しているらしいこと

 ・古代ギリシア語で「管区」を表すδιοίκησιςは「家事」という意味ももっていること


 から、「教区労働者」は「家事労働者」とするのが正しかったのでは、と教えてくださいました。確かに、時代背景を考えると、こちらの方がはるかに納得できますよね。宮澄あおいさん、ありがとうございます!!!


 なにはともあれ、古代ギリシア人が上記のようなかくも興味深い比喩を生み出すに至った一番の理由は、古代ギリシア文明では男性が女性よりも上に置かれていたから、なのだそうです。

 古代ギリシアでは、真っ当な・・・・女性とは家に籠って子供の面倒を見ているもので、世間に身をさらし人目を引きつけるなどとんでもないことだった。ゆえに、古代ギリシアの男性が自由に触れ合える女性は売春婦しかいなかったのだそうです。まあこのあたりの事情は、古代ギリシアだけに限ったものではありませんが。

 でも古代ギリシアの女性は夫が他の家に客として招かれても同伴せず、逆に夫が自宅に客を招いても、食事を共にすることはなかったそうなので、なんだかなあ……という感じですよね。一応、女性たちは家族会議のような場での意思決定に参加でき、自分たちの組織(奥様同士の助け合いネットワークみたいなものなのでしょうか?)も持っていたそうなのですが。でも、退屈で仕方なかっただろうなあ。なにしろ古代ギリシアの女性の平均的な結婚年齢は、十四歳ぐらいだったそうなので。古代と現代を安易に比較してはいけないとは思うけれど、まだまだ自由に遊びたい年頃ですよね。しかも当時は、十六~二十の年の差婚は珍しくなかったそうです。うーん。

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