第7話
「でね。まだ私は怒られてないのよ。」
いつもの様に隣に座る桂吾に私は愚痴をこぼしていた。
「ホント、ウチの学校どうかしてるわ。私がこんなに無断で休んでるのに全然問題にしないのよ?おかしいじゃない。」
桂吾は黙って聞いてくれている。
「それにこれ…。」
私はスマホをいじりSNSの画面を桂吾に見せる。そこには私を虐めていた一人からのメッセージが表示されていた。
“瑞穂ちゃん、学校来てないけど大丈夫?”
“私はやり過ぎだって言ったんだよ。”
“みんな心配してるよ。”
“ごめんね。返信待ってる。”
「イジメが原因で休んでるのがみんな分かってるのよ。それでこの子は自分はそんな事したくなかったって責任逃れしてるのね。」
「返信はしてないみたいだな。」
「そうよ。別に言い訳なんて聞きたくもないし。」
「何でイジメが始まったのか聞いてみればいいじゃないか。原因が分かれば対処出来るかもしれないだろ?」
確かに理由が分からない事が私を追い詰めた原因でもあった。
「うん…。でも聞くの恐いな…。」
「かもな。でも、どうせこれからも学校に行かないって思って聞けばいいじゃないか?もし、その理由が悲しかったり辛かったりしたら…」
「したら?」
「俺が聞いてやるから大丈夫だ。」
「カッコいい事言ってくれるじゃん。」
私は嬉しいのと恥ずかしいのとでにやけながら桂吾を肘でつつく。でも桂吾の表情は真剣だったからちゃんと答えなきゃと思った。
「うん。返信してみる。」
「そうか。それがいい。」
この立ち止まっているように思える日々が桂吾のお陰で先に進めそうな気がした。
「ありがとうね。」
「なんだよ。」
「素直に受け取りなさいよ。感謝よ、感謝。」
「偉そうな事言える立場じゃないんだけどな。だけど、受け取っておくよ。…で、どこまで進んだ?」
少し恥ずかしそうにした桂吾は『車輪の下』に話を移した。逸らしたと言った方が良いかもしれない。
「ハンスがハイルナーを裏切ったけど仲直りした所かな。桂吾ってハイルナーみたいよね。」
「俺がハイルナー?俺はあんなに喧嘩っ早くないぞ?」
「そこじゃないわよ。物知りで機転がきいて、自分の考えをしっかり持ってて、それを言葉に出来て……」
「…で、空想家で勉強しなくて周りを馬鹿にしてる所か?」
「そうかもね。ハンスは私、桂吾はハイルナー。」
私は笑ったが桂吾は笑わなかった。
「瑞穂、その気持ちでそれは読まない方がいい。」
「え?何で?」
「良い結果を生まないからだよ。瑞穂はハンスじゃない。分かったな?」
「……分かった。」
あんまり真剣に言うのでそう答えるしかなかった。それでこの先のハンスには破滅が待っているんだなと分かってしまったけれど、ネタバレしても私を気遣ってくれた桂吾が私は嬉しかった。
「明日は土曜日だけど、瑞穂は来るのか?」
「桂吾は来るの?」
「ああ。」
「じゃあ来る。またね桂吾。」
「またな瑞穂。」
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