第4話
「今日は私服なんだな。」
桂吾は私を見るなり挨拶もせずに言った。
「堂々とサボってみたの。それよりちょっと聞いてくれる?」
「何だ?」
「昨日、学校サボったじゃない?帰ったら怒られるんだろうな…って思ってたのに、学校から私が来てないって連絡がなかったらしいのよ。」
「良かったじゃないか。」
「良くないわ。もしこれが誘拐とか犯罪に巻き込まれていたとかだったら大問題よ?」
「確かに。」
「だから今日もサボってみたの。いつ学校から連絡が行って怒られるか確かめたくて。」
「まあ、元気そうで何よりだよ。」
桂吾は呆れた様に言う。
そして、いつもの様に萎れた花を片付け新しい花を供える。
私は持ってきた花を桂吾が供えた隣に置いた。
「ありがとう。」
桂吾からの感謝の言葉を素直に受け止めつつ昨日と同じ場所に座った。
「彼女ってどんな人だったの?」
「ん?そうだな…。鳥が好きで虫が嫌いで…。なんか俺、いつも怒られてたような気がするな。その位芯の強い人だったよ。」
「へ~。カッコいい人だったんだね。見た目はどんな感じ?写真とかないの?」
「俺スマホとか持ってないから。」
「そう…。」
「少し瑞穂に似てるかもしれないな。」
そう言われてドキリとした。それを隠す為におちゃらけてみる。
「じゃあ美人だったんだね。」
桂吾はアハハと笑い「そうだな」と言った。
「そんな人が何で死んじゃったんだろ?」
「だから、それは…。」
「分かってる。分からないんでしょ?」
柔らかい風が私達の間を通り抜ける。しばらく無言だった桂吾が話し出した。
「ここが何で自殺の名所って呼ばれるようになったか知ってるか?」
「そりゃ自殺が多いからでしょ?」
「ここでは四人しか死んでないんだ。まあ、四人死んでれば自殺が多いって言っても良いんだろうけど…。他の有名な所と比べたら歴史も人数も全然足りないだろ?」
「樹海とか?」
「そう。」
「しかも最初の一人は事故だったんだよ。もし、彼女が事故だったら、自殺は二人って事になるし。」
「彼女は何人目なの?」
「三人目。」
「…で、何で自殺の名所って言われるようになったの?」
「夏のコンビニとかで『心霊スポットマップ』みたいな本見たことない?」
「あぁ、あるね。買った事はないけど。」
「それに載ったんだよ。『自殺の名所』ってね。一昨年だったかな。」
「そうだったんだ。結局マスコミが作った自殺の名所って事なのね。」
「そうだな。下らないだろ?」
「ほんと、下らないね。私はそんなマスコミに踊らされてここで死のうとしてたんだ。浅はかだったわ。」
「もう死ぬ気はないんだろ?」
「そんな事言ってないわ。私は保留するって言ったの。」
「頑固だな。」
そう言って桂吾は笑った。
「さて、俺はそろそろ行こうかな。花、ありがとうな。」
私はもう少し桂吾と話していたかったが引き留める理由も話題もない。
「そう…。私はもう少しここにいるよ。」
「うん。じゃあ、また明日な瑞穂。」
「また明日ね桂吾。」
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