第37話 選ばれてねぇの?!
今日は、選別の日。さっそく、家で準備を始めると、部屋にいる師匠が目に涙を浮かべていた。何があった?!と思うだろう。実際、オレもそう思った。
「し、師匠?!ど、どしたのさ?」
「あ、カアレか‥‥。今日は選別だな‥」
「いや、そうじゃなくて。どうしたの?」
「‥‥‥。まあ、黙っててもバレるからな。
えっと‥俺‥‥選ばれなかった」
え?それって、おかしくないか?
そりゃ、実力とかもあるだろう。でも、決定的におかしいのは、"選ばれていないこと"だった。
そう、師匠はたしかにこの時期に選ばれていた。選ばれていたはずなんだ。なのに‥‥なぜ選ばれていない?!
「俺‥力不足なのかな‥‥。俺がいると、天使様の邪魔になるのかな‥‥」
「‥‥‥‥」
オレは何も言えなかった。選ばれない理由を考えていたこともあるが、やっぱり、師匠の問いかけに否定をする勇気がなかったんだろう。ずっと、黙ってしまった。
それからは、お互いに何も言わないまま、準備を進めた。やべえ、めっちゃ気まずい。
準備を終えると、扉が急に開いて、
「よし、二人とも。準備は出来たかな?」
と、問いかける人物が。そう、騎士長だ。
師匠と一緒に行くように言っていたらしく、3人一緒に天門の前へと向かった。
行き道で師匠は、
「なぁ、父さん。俺‥なんで選ばれなかったんだろう‥‥」
騎士長にきいていた。師匠は、本気で天門に行きたいんだろう、そう思った。
「ああ、そうだな‥‥。私も必死に掛け合ったんだよ。そしたら、遣い様は、彼は切り札。まだ彼を使う時では無い、って言ったんだ。いやぁ、師匠として、こんなに嬉しいことはないぞ?」
騎士長は、笑いながら話した。師匠を元気づけるように。
「だから、タスクよ。これからもっと、精進あるのみ。だぞ?」
師匠は涙をこらえ、笑顔で、
「あ、ああ!任せてくれ、父さん!
よし、カアレ。天門まで競争だ!!」
そう言って、師匠は走りだした。よっぽど嬉しいんだろうな。
たまには、こういうほのぼのとしたのも、悪くないかもなぁ。
「カアレよ。タスクを任せたぞ」
唐突に騎士長が言った。それ、オレに言います?逆じゃないんですかね?でも、
「はい、任されましたよ」
なんて言ってみた。冗談が通じたらしく、騎士長は笑ってくれた。
「父さん、カアレ!行かないのか?」
子供みたいだな‥。ま、それだけ嬉しかったんだろうな、師匠。
さあて、オレ。今からが勝負だ。誰にもバレなきゃいいんだけどなぁ。
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