第32話 そういうこと、って?
結局、家に帰ってもうまく寝つけなかった。もしあの花が、ほかの誰かに見つかっていれば問題になる。そうなれば、真っ先にレイジが疑われて、うやむやになっていたレイジの罰が重くなるかもしれない‥‥。
オレはガラにもなく他人の心配をしていた。これも、いろんな経験からのものなのだろうか?
気がついた。どうやら、眠っていたようだ。良かった‥‥なんて思っていたのも、つかの間。修行予定の刻は過ぎていた。やばい!寝坊した!準備!準備しねぇと!
準備の最中、オレはベッドで、師匠からのメッセージらしきものを見つけた。
<カアレ、今日は忙しいから、修行は無し。
自由に過ごせ タスク>
急いだ意味、とは‥‥‥。
急いだり、落ち着いたり、こっちも忙しいよ。なんて思いながら、いつもの草と水で腹を満たした。‥‥はぁ、そろそろこれも飽きてきたなあ。そろそろ覚悟を決めて食堂に行こっかな〜。
そうして、10刻。オレは町を歩いてみることにした。何の意味もない、ただの散歩だ。
しばらく歩いて、やっぱり、いい町だと感じた。まぁ、こう感じるのも、長く住んでいて愛着が湧いたからだろう。
感慨深く眺めていると、突然、
「あれれぇ〜?君は‥‥‥」と言って声をかけてくる人が。そう、コノハだ。大人になっても、ずっとオレの側にいてくれたっけ。
そういや、町案内の時には、騎士長には会ったけど、コノハには、会わなかったなぁ。
「おう、コノハ。久しぶ‥‥‥」
いや、待て待てオレ!この世界じゃ会ってねぇだろ!何回これするんだよ!騎士長の時もした気がするよ!(書いてないけど)
聞き流さないかと思っていたけど、
「え?なんで私の名前‥知ってるの?」うん、やっぱそうなるよね、こういうときは誤魔化さないと。
「あれれ?‥オレ、君の名前呼んだっけえ?‥‥えっと、その‥‥あれだ。か、勘違いじゃないのかなぁ?」オレは必死に誤魔化した。でも、コノハは険しい顔で考え、オレを見て言った。
まるで、オレの声が届いていないかのような、冷たい表情で。
「あ‥‥そうなんだ。そういうこと、なんだね‥‥‥。」
そういうこと?どういうことだ?名前以外にマズイ事言ったか?‥いかん、オレの方がわからなくなってきている。でも、コノハは、いったい何を理解したんだ?
明らかな困惑を浮かべていると、コノハはいつもの明るい表情に戻って、
「あ、ごめんね!わたし、考え事してた。改めて、わたしはコノハ。よろしくね!」と言い、手を差し出してきた。オレは、その手をぎこちなく握り、自己紹介をした。
「えと‥‥オレはカアレ。その‥よろしく」
なんか、すごい気まずい。オレはその雰囲気に耐えきれずにその場から走り出して(ていうか逃げて)、
「あ!そろそろ行くよ。じゃあ、また今度」
これ以上なんか起こるのは嫌だ。オレの体がそう言っている。オレ、そんなに人付き合い悪かったっけ?
あぁ、修行以外でこんなに疲れたのって‥‥
‥‥うん、結構あるな。
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