第31話 バレたくない夜

「そうか!ありがとう、頼んだよ」

レイジは、すごく嬉しそうだ。でも‥‥

言えない、しっかり聞いてなかったなんて。

言えない、本当はめっちゃ怖いって。


<あの墓は、罰で死んだ者など様々な人間が埋葬されているんだ。彼らは、あんなに大変な修行を頑張っていたんだ。せめて、花を添えてあげないと報われないじゃないか>


な〜んて、レイジは言っていたけど、そんな事して良いのか?(いや、駄目だけど)

でも、あの言葉を聞いてオレは安心していた。レイジは、信じられる。これだけ人間の死に何かを感じられる人は、初めて出会う。

あの師匠でさえ、クルスとシウラの暴力に冷静だったのだから。

という訳で、草と水を貪り、やって来ました墓の前。寝たふりをして家を抜け出し、レイジの家に行き、花をもらう。我ながら、よくやっていると思うよ〜。

レイジは師匠と遠くの方で修行らしい。とはいえ、油断は禁物。誰にいつ見られるか分からないからな。

周りをしっかり確認したオレは、レイジからもらった花を墓の前に置いた。えっと‥‥たしか手を合わせるんだっけ。

(修行、ご苦労様でした)

‥、‥‥、こんな、感じかな?大丈夫だよな?誰もいないよな?

オレは、墓を去ろうとした時、ふと思い出した。

(そういや、ここに花あったよな‥‥)

花の無い墓、何気ない景色じゃないか‥‥

!、そういやおかしくないか?なんでここに

"花が無い"?!オレは、この世界では何もしてないぞ?!

もし‥‥、誰かが見つけたのだとしたら‥‥

オレは、すぐに家に帰った。怖くなったのもあるが、なんだか、ここにいてはいけない、そんな気がした。

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