第108話リスク
そいつは、まるで
ゼウスが加わったことで、士気が上がった俺たちはワイバーンの群れを壊滅させる寸前まで追いやった。
これ以上やると生態系にまで影響が出ると、エリーちゃんが魔法を撃ちながら説得力に欠けることを言ったため、それまでとなった。
リオ「エリー、容赦ないね」
山田「いや、エリーちゃんはまだいいって。魔法二、三発でワイバーン一体だろ?」
アレ見てみ?
ゼウス「
我らが最強さんは、スキルで飛翔し高速で槍を突きだして飛ぶ突撃の嵐をお見舞いしてた。空中・槍一本とは思えないほど凄まじい勢いでワイバーンを撃ち落としていく。
その様は正しく、鬼神だった。
山田「あれに比べたら、な」
リオ「……」
目も口もあんぐりってやつのリオのねえちゃんでした。
気持ちわかるぜ……アイツの無双っぷりを初見したら誰だってそうなるわなー。
このねえちゃんの場合、ゼウスとガチンコ勝負した気でいたろうから余計か。
まあ、エルフの魔導士と全力全能の
ゼウス「なんだ山田と同じ顔をしているぞ?」
リオ「そんな顔してないし!」
山田「バカってか!? バカみたいな顔って言いてぇのか!? リオのねえちゃんも理解しねぇでくんねぇかなぁ!」
エリー「さて、ギルドに戻りましょうか」
一人冷静に帰り支度を始めるエリーちゃんは俺たちのやり取りに呆れてる。ゼウスが少し馴染んできたのはいいけど、エリーちゃんにシカトされんのはきちーな……。
忘れられるのが一番辛ぇよ。
※
山田「俺はちょっくら寄り道してくるわ」
街に戻ってきてすぐキラキラ笑顔のイケメンフェイスでそう切り出した俺にエリーちゃんは不思議そうに尋ねてくる。
エリー「どこいくの? 報酬の相談をしたいのだけれど……」
山田「わりぃ! ゼウスに俺の分渡しといてくれ!」
ゼウス「俺のものは俺のものになるな」
山田「ネコババすんじゃねぇぞ!」
マジでやりかねないから釘を差しておく。急ぎ足で俺はこのパーティーを離れた。
あーやっぱ、俺の取り分はエリーちゃんに持ってて貰えば良かった。そうすりゃ、また会うきっかけにもなったなぁ……。
ま、アイテム屋のおっちゃんには礼言わなきゃだしな。ゲロゲロデラックス瓶のおかげで俺の見せ場作れたし。
山田「それにしても、異世界の街並みってのは想像よりずっと穏やかだな」
もっと活気があったり、街中でいざこざがあったり……領主のねえちゃんがしっかりやってんのかね。すげぇ平和。
今も子どもたちが俺の横を笑いながら通りすぎていくし。すっかりこの街にも馴染んできた俺らはここの商人とも顔見知りだ。
特にこの俺こと山田はアイツらの使う装備やアイテム類を調達するのに、よく外出してたから尚更だぜ。
山田「俺が四人の中でコミュ力最強ってな! なはっはっはぁー!」
いやーそれなら実に気分がいいぜ。散々人のことバカだなんだ言ってくれてるからな。
道行くこども「なんか赤い大人が笑ってる」
道行くこども「変なのー」
道行くこども「バッカみたーい」
道行くこども「「「なはっはっはー!」」」
山田「……こどもって残酷だ」
容赦ねぇなぁ……。笑い方真似して、ボロカスに言って……あ、やべ、目にゴミ入った。
目から汗が……。
山田「目から汗出してる間についちまった」
袖で目を拭いて、俺は改めて最早常連になりつつある店の外装を眺めた。
一戸建てのここは大通りの中にあってそれなりに繁盛しているようで、背中に斧を背負った筋骨粒々お客が俺とすれ違う。見た目だけなら、ユアショック! めっちゃ厳ついぜ。
客「お、この前も会ったなあんちゃん」
山田「へへっ、どうも!」
客「相変わらず、気さくに笑うじゃねぇか! モテるだろう?」
山田「いやーそれが全然っすわ。おっちゃんの方がモテるっしょ? 筋肉モリモリで羨ましいぜ!」
客「なぁにこんなオッサンに寄ってくる女はいねぇよ。そうだ、今度一杯どうだ?」
山田「マジっすか! 是非!」
客「おうおうそうか! よっしゃ、仲間に声かけてきな。宴会だ!」
山田「おっちゃんマジさいこーだぜ!」
山田・客「なっはっはぁー!」
でっけぇ斧を担いだおっちゃんが行ったのを確認してから俺は店に入る。
ああ、そうだ。これが、パーティー一番のコミュ力を持つ俺の実力だぜ!
ここの店主ともこの前すっかり盛り上がっちまって結構サービスしてもらったからな。今回はちゃんと礼言って、アイテム買わねぇと。
店主「いらっしゃい! お、初めて見る顔だな。初回限定サービスしてやるよ!」
……え? あれ?
山田「な、なぁに言ってんだよ? この前も来ただろ?」
初めて来た時と全く同じ様子の店主に戸惑いながら俺はそう弁解した。まるでここだけタイムスリップした気分になる。
店主「バカ言うんじゃねぇ。おらは一度見た客は忘れねぇよ!」
あっれぇぇぇぇ……? どうなってんだ。
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