第72話エルフのスマイルサンキュー

 意外といいやつだったブラッドベルが完全に消えた。

 緊張の糸が切れた俺は仰向けで地面に倒れた。


山田「はぁー! 疲れたぁー‼」


エリー「や、山田くん、地面に寝るなんて……」


 お、マジメちゃんだなー。

 こりゃ、エルフの学校とかあったら委員長タイプだわ。

 想像したら、尊すぎてヤバイ。一生、怒られたりしたい。

 ……。

 あー床つめてぇ。


山田「固いことなしってことで」


エリー「もう……」


 苦笑で見下ろしてくるエリーちゃんのスカートの中見えそう……。やばい、白ソックスとスカートの間、すなわち絶対領域もこの角度からだと絶妙にエロい。

 ……おれのあれがテント張っちまう前に……なんとかしねえと。


山田「エリーちゃんも寝転がってみろよ。ひんやりして意外といいもんだぜ?」


エリー「わ、私はいいわ……それより山田くん、あの子たちを速く」


山田「おっと! そうだった! 早く回復しねぇとやべぇ‼」


 すっかり忘れてた……。やっぱ、エルフのエロフはガチで我を忘れちまうわ。


エリー「回復魔法なら少しだけど私が使えるから、案内して!」


山田「おう! 『消失サイレント』解除!」


エリー「……あ! あそこね! ヒーラーサークル!」


山田「おお……リアル回復魔法は初めてみたぜ。マジで緑色って感じだな」


 倒れ伏している三人の女の子の下に緑色の大きい魔法陣(?)みたいなのが出てくる。身体中から血やらなんやらが飛び出てた重症がみるみる治癒していく。

 ねこねこもこんなことしてくれたらいいんだけどな……まあ、俺らがケガしなきゃいいだけか。


エリー「山田くんはいいの?」


山田「お? 平気だぞ。HP満タンだぜ!」


エリー「そう……」


ちょっと持ち上げてた小さめの杖が脱力した手と一緒に下がる。


山田「え……なんでそんな残念そうなの?」


エリー「……気にしないで」


山田「お、おう……ちょっと睨まれてるような気がするけど」


エリー「なにか?」


山田「いや、なんでもねぇ!」


エリー「……山田くん」


 髪の毛を耳に掛けるしぐさにドキっとする二〇歳童貞とは俺のこと。

 高鳴る鼓動を抑えつつ、俺はとりあえず返事を返した。


山田「な、なんですか?」


エリー「助けてくれてありがとう」


山田「……やっべぇ、美少女のスマイルサンキューって破壊力やっべぇな」


エリー「でも……もう二度とあんな風に自分だけ犠牲になるなんて真似しないで」


山田「……やっべぇ、怒った顔もいいわー。やっぱいいわー」


エリー「私が弱いのもわかってる……それでも、あんな風に目の前で誰かが倒れるのはもうこりごりなの」


山田「むふーん……弱った感じも悪くないですなあ」


エリー「いい加減、マジメにしてくれない?」


山田「それは最も俺が苦手にしてるやつだぜ! つまり無理ってことだぜ!」


 ……軽口でなんとか乗り切ってやったぜ!

 バレテねぇよな? ドキドキして顔赤いの。

 エルフ……やっぱ至高だわぁ。中でもエリーちゃんは俺が観てきたエルフの中でも一番かもしれねぇわ。


エリー「そう……ふふっ、山田くんはどこまでも山田くんなのね」


山田「それが俺だぞ?」


エリー「そうみたいね。今までのやり取りで大体わかってたわ」


山田「あれ……俺、エリーちゃんにまでバカ扱いされてね?」


エリー「ふふふっ……どうかしらね」


 ちょっ……好きな子にそんな扱いされたら、さすがに凹むぞ?

 童貞の純情にして潔白な精神を弄ばないでくれよ……あ、エリーちゃんなら、それもありかも……な。

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