第48話とべるねこはすごいねこ

アラン「……あのクールなセアラがここまで崩れるなんてね」


吊り上がった口元とメガネ越しの瞳でセアラとぼくを交互にじろじろと眺めているアランおねえさん。


ねこねこ「ぼくね、アランおねえさんに質問したいんだけどぉ?」


アラン「あら、なにかしら?」


ねこねこ「レベルが一五で止まった時はさ、どうしたらいいの?」


ぼくの質問に知的おねえさんは、少し考えて答えてくれる。


アラン「…………レベルが止まる……異世界の住人……そういえばあの本は……ちょっと待っていなさい」


なにかを思い出したみたいにフワフワと空中を飛んでぼくらの前から消えるおねえさん。

お股を覗こうと思ったけど、セアラがいるから止めておくことにする。

代わりに空が飛べるのがちょっと羨ましく思ったからセアラに訊いてみることにした。


ねこねこ「ねぇ、どうやったら空飛べるの?」


セアラ「お前、賢者だろう……飛べないのか?」


ねこねこ「え、なにその常識だろみたいな顔……飛べないよ。ぼくの世界じゃそんなの無かったし」


セアラ「そうか。だが、魔導士になれば誰しも自然にできるようになるんだが」


ねこねこ「魔法使うみたいにすればいいの?」


セアラ「似たようなものだ」


ねこねこ「ふーん……こうかな」


頭の中で空を飛んでいる自分をイメージしてみる。

すると、自然に身体が浮いてまるで無重力状態みたいに感じた。事実そうだと思う。


ねこねこ「おおー、すごーい! ぼく空飛んでる!」


二次元を除く前人未踏の境地にぼくは感激して、空中浮遊の快感をこれでもかと楽しむ。


セアラ「……嬉しいのはわかるが……場所を弁えてくれ。そんな風にクルクルと私の頭上を回るな」


ねこねこ「ねぇねぇ! ひょっとして、瞬間移動テレポートとかもできる?」


セアラのキレイな顔の前まで浮遊して、更なる境地の確認をする。

詰め寄られてちょっと赤くなったセアラは半歩身を引いて、ぼくの質問に答えてくれる。


セアラ「人間に限るなら異国の賢者……それも極限られた者は使えるようだ」


ねこねこ「サキュバスのおねえさんみたいなモンスターだけのスキルじゃないんだね! よぉーし……」


浮遊を止めて、ぼくは頭の中に今行きたい場所を強くイメージする。

そして、そこに一瞬で移動するって意識を集中……。


***


アラン「確か……この本棚に……」


ねこねこ「見つかった?」


アラン「ひゃん!? な、い、いつの間に来てたの?」


浮遊してる本棚の一つに指をなぞらせながら、探し物してるメガネおねえさんの可愛い声が聞けてラッキー。ついでに眼鏡をかけ直す仕草も見れてタブルラッキー。

それと無事に瞬間移動に成功したみたい。

場所がわからなくても、その会いたい人をイメージすればできるって結構便利。

イメージはぼくの力になるんだ!


ねこねこ「たった今だよー。テレポートしてきたー」


アラン「て、テレポート!? そんなのできるわけ――」


言い終わる前に瞬間移動を発動して、セアラを連れて戻ってくる。


セアラ「お、おい! なぜ、このような恰好を……‼」


飛べないセアラをお姫様抱っこしてるんだけど……顔赤くして恥ずかしがってるのカワイイなぁー。

驚いて声も出ないアランおねえさんに、ぼくはドヤ顔と笑顔を混ぜた顔で。


ねこねこ「ね?」


と自慢する。


アラン「アナタ一体……普通じゃないわ」


ねこねこ「うーんまあ、そうだろうね。ぼく、賢者だし。きみとはジョブが違うから」


アラン「け、賢者ですって……それも異世界の……そう……だからあの人は……」


一人でごにょごにょと呟き始めるおねえさんにセアラが赤い顔で問いかける。


セアラ「あ、アラン……結局、どうなんだ? その……この男のレベルの件は?」


アラン「え、ええ。そうだったわね……この本なんだけど……」


そう言って、一冊の分厚い本を本棚から抜き取ってぼくに手渡すおねえさん。


その表紙を見て、ぼくは驚愕した。


ねこねこ「え……これ、ちょっとだけ日本語で書かれてない?」


表紙の題名はこの世界の文字がメインだろうけど、その上に小さく日本語で『こうりゃくぼん』って書かれていた。


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