第47話わらうねこにふくきたる
広々とした空間に膨大な蔵書の数々。本棚が空中を漂ってたり、魔法使いっぽいような人が飛んでたり、黙々と読みふけっている老若男女がいて、いかにもファンタジーで図書館だ。
ねこねこ「おぉー」
セアラ「このミフラ魔導図書館はわが国でもトップクラスの貯蔵数を誇っている。ここならお前が探している情報もあるかもしれん」
ねこねこ「そんなスゴイところがあるんだー。それよりー、初の図書館デートだね、セアラ!」
セアラ「……静かにしろ、マナー違反だ。それとも、その口を斬り落とされたいのか?」
本気で殺意をこもった目線と剣に手を伸ばす彼女にぼくは首を横に振る。
セアラ「ふん……ここの司書とは知り合いでな。今から話を通してくる」
ねこねこ「え……ぼく一人……」
知らないところで大勢人がいるとこに一人……。
セアラ「おい、スカートを引っ張るな。その寂しそうな演技もやめろ」
ひらひらのメイド服のミニスカートをぎゅっと握るぼく。
それを迷惑そうに振り払おうとするセアラを見上げてぼくはいう。
ねこねこ「演技じゃないよ……」
セアラ「……はぁ……分かった。ついてこい。だたし、司書の半径三メートル以内に近づくな」
ねこねこ「えー」
セアラ「不満なら置いていく」
ねこねこ「……わかったよ……セアラから離れない」
セアラ「そういう意味ではない!」
ねこねこ「それはそうと、水色のパンツって可愛いと思うんだ。レース素材の」
セアラ「斬るぞ?」
*
不機嫌なセアラについていく右頬をモミジマーク真っ赤にしたぼく。
ジンジンと痛む頬を手で撫でていると、真上からキレイな声がセアラを呼び止める。
「久しぶりね、セアラ」
セアラ「ああ、久しいなアラン。
セアラに釣られて、見上げるとそこには、空中浮遊してるメガネ美少女がいた。
空かさずぼくの
ワインレッド色のセミロングで片側だけ三つ編みのヘアスタイル。
色白ですべすべしてそうな柔肌と白い手袋でメガネをくいっと整える魅力的仕草。
司書の人の制服に薄黒っぽいベレー帽。後ろ腰には杖と思しき短い棒がある。
全体的に知的なイメージでとてもグッジョブ。黒タイツでスカートなのもいいね! 絶対領域・オブ・ザ・ゴッド‼
セアラ「おい、しゃがんでなにを見ようとしている?」
ねこねこ「ぎく」
アラン「あら? こども……?」
ねこねこ「ぼく、ねこねこ! 一三歳!」
セアラ「通用しそうな年齢詐称をするな!」
ねこねこ「はいはい。セアラと同い年だよー。因みにセアラとはチョー仲良し!」
アラン「セアラ……ショタ属性あったの? 私の記憶にはないのだけれど……」
セアラ「安心しろ。記憶通りだ。貴様もふざけたことをのたうつな」
ねこねこ「で、このキレイなメガネおねーさんはだれー?」
アラン「あら? 私を知らないの?」
なぜかM男が喜びそうな冷めた目で見られてちょっと怖い。
ぼくを庇うようにセアラは口を開いてくれる。
セアラ「こいつは異世界から来たんだ。お前のことを知らないのも当然だ」
セアラの一言にアランっていうおねえさんは浮遊をやめてぼくらのいるところまで下りてくる。
アラン「へぇ……異世界から、ねぇ……」
ねこねこ「あれれぇ、疑われてるぅ?」
セアラ「こういう時にふざけるな……それから、一歩下がれ」
ねこねこ「? うん」
あ、さっきの三メートルルールのことね。
アラン「あら、セアラったら……その子のことお気に入りなの?」
セアラ「こうでもしないと、余計な犠牲者が出てしまうだろう?」
二人の会話にいまいちついていけないぼくはこっそりとセアラの袖を二回ひく。
ねこねこ「どゆこと?」
ぼくが他の女の人に近づかないようにっていうセアラなりの束縛なのかなーって思ってたけど、どうも違うみたい。
セアラ「そうだな……紹介しておく。アランは私の学生時代の友人にして、この国で三本の指に入る魔導士だ」
アラン「よろしくね」
ひらひらと手を振ってくる彼女にぼくも笑顔で手を振り返す。
魔導士かぁ……魔法使いの上位職で賢者の下位職。『Noah』だと習得できる魔法はちょっとしか変わらないけど、魔法攻撃力と回復力がかなり劣る。
それでこの国一番ということは、賢者がこの国にはいないのか、はたまた賢者より強い人ってことなのかな。
ぼくの思考はセアラの髪をかく仕草によって一時停止。うん、セアラも負けてない! 色っぽいよ!
セアラ「だが、こいつには欠点……というより悪癖があってな……。所構わず男を食い散らかす」
……まっさかー?
アラン「あらあら……ちょっと、人聞きが悪いわよ。学生の頃、セアラのこと好きだった男子でちょっと遊んだだけじゃない」
つまりー……メガネ痴女おねえさんってことかなぁ?
ねこねこ「セアラ、大丈夫だよ」
セアラ「……ねこ」
得意げな顔で前に出るぼくにセアラは若干心配そうな顔で見つめている。
ねこねこ「男の憧れ、メガネ痴女おねえさんなんてぼくの大好物そのものだよ!」
セアラ「私の心配を返せ、この色欲小僧‼」
激怒したセアラの声が図書館中に響き渡って、周囲の目がぼくたちに集まる。
それに気が付いたセアラは、恥ずかしそうに顔を背けていた。
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