第44話ばかのうらじじょうとめげないねこ
山田「やっぱここら辺が怪しいと思ってたんだよなぁ」
ギルドを出て左の角。
昼間なのに薄暗い路地の裏手で、ひっそりと佇んだフードの男。
???「……いらっしゃい」
山田「ここは何を取り扱ってんだ?」
にやける顔を堪えつつ低く小さい声の男に尋ねる。
???「まあ……見てきなよ」
そういうと机の上にいくつかの色鮮やかな結晶が並べられる。
山田「へへっ……やっぱそうか。この世界にもあったな。『Noah』でもこういう人目がつかないところにあったしな」
禍々しいほど歪な短剣と一つの赤い結晶を手にとって、中に閉じ込められた品を見ながらにやける。
山田「……これがあれば、万が一の時も安心だな」
*
広大な庭。その真ん中で優雅に和んでいる二人の美少女を発見。
一人は無数の紙束に目を通していて、一人はお盆にカップを乗せている。
セアラ「姫様、紅茶をどうぞ。あまり、無理をなさらないでください」
オブ「あら、ありがとう……やっぱりセアラが淹れてくれる紅茶は最高ね」
ねこねこ「へぇーぼくも欲しいなー」
セアラ「ね、ねこ!? 貴様、どこから入った!」
ひょっこりと背後から声をかけるぼくに睨みながら驚くセアラ。
ねこねこ「入口の掃除してたメイドのおねーさんにお願いしたら通してくれたよ」
セアラ「この女たらし小僧!」
えー……ぼくはただ、おねーさんに「オブお姉ちゃんどこですか?」って笑顔で訊いただけなのにー。
そんなに怒らなくてもいいじゃん。
オブ「ねこねこさん、なにか忘れ物ですか?」
拗ねているぼくに優しい口調でオブおねえちゃんが問いかけてくる。やっぱり優しいおねえさんってすごく魅力的だと思うよ。
ねこねこ「ううん。ちょっと聞きたいことがあったんだ」
オブ「あら、なんですか?」
ねこねこ「ぼくらさ、レベルが一五で止まっちゃったんだ……どうすれば、いいの?」
オブ「すみません、私はまだ、そこまでのレベルに達していないので……あ、でもセアラなら!」
セアラ「……申し訳ございません、姫様。私にもわかりかねます」
ねこねこ「う~ん……どうしたらいいんだろう」
オブ「そうですね……調べものなら、図書館に行かれてはどうですか?」
ねこねこ「……ぼくこの世界の文字読めないよぉ」
困り顔でチラチラとセアラの方を見ながら言うぼくに負けた彼女は鼻から息を短く出す。
セアラ「……私がついていこう。お前にはクエストでの借りがある」
ねこねこ「ほんとに! ありがとー、セアラ!」
セアラ「こ、こらっ! くっつくな‼」
抱きついたぼくが言うのもあれだけど、よくティーセット落とさないね。
オブ「ふふっ、ホントに仲がいいんだから」
セアラ「姫様、これは違います!」
ねこねこ「セアラ、いー匂い……これはー、石鹸かな? 良いの使ってるんだね」
香水とかそんなの使っていない、セアラ本人の香りに夢中になっちゃう。
スーハ―と味わっていると、上から汚物を見る目で見下されていた。
セアラ「貴様、牢獄にぶち込まれたくなければ、さっさと離れろ!」
ねこねこ「えー、でもいい匂いだしー」
セアラ「離れろっ!」
ねこねこ「いやでもー、セアラだったら力ずくで引き剥がせるでしょー?」
セアラ「は! な! れ! ろ!」
オブ「ふふっ……あははは」
ねこねこ「あ、オブおねえちゃんがお腹抱えて笑ってるー」
セアラ「姫様!」
女の子の笑顔はやっぱりいいね。
嫌なこともなにもを忘れさせてくれる。
ぼくが好きなのはそんな綺麗な笑顔をしてくれる人で、一緒にいて明るくなれるような人。
ねこねこ「オブおねえちゃんとセアラはパーフェクトだね」
二人には絶対聞こえないようにぼくは、口元をローブで隠してそう呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます