第22話とうちゃく

 月明かり以外光が射さない城。木々に囲まれて怪しげな雰囲気が強まっている。

 俺たちに既視感があるのは、『Noah』でみたことがあるからだろう。

 ゾンビ共を砕いてから再び馬車に揺られて、たどり着いた西の古びた城。


ロイオ「それにしても、なんで急にあれだけのゾンビが湧いたんだ?」


 辺りを見張りながら俺はその話題に触れる。


オブ「……わかりませんが、もしかすると城のモンスターが侵略を始めたのかもしれません」


 城の門まで来て、強張った顔でオブさんは推測する。


セアラ「報告では、人型のようなモンスターらしい。指揮能力もあるとするなら、相応の強さだ」


ねこねこ「ねぇ? ぼくだけ縛られてるのなんで?」


 俺の担いでいる荷物がなにか音を立てるが気にしない。


ロイオ「なら、そいつを倒すしかないか……でねぇと、またあのゾンビの群れがくるかもしれねぇな」


ねこねこ「ロイオまで無視しないでよー」


 セアラに両手両足を縄で縛られたねこねこ(荷物)。このクエストが終わるまではこれで勘弁してやるらしい。

 正直、こいつばっかり美味しいとこ取りなのが気に入らない。

 だから、俺も無視だ。

 どうせ動けないんだ、背負ってやるだけ感謝しろよ。


セアラ「妙だな……モンスターの気配がない」


 門を抜けて城の大きな扉に耳を当てたりして中の様子を窺う戦士。

 人間が通るにしては少し大きい鉄の扉だ。モンスターの気配が無かろうと冷たい空気感を放っている。


オブ「さっきのゾンビたちがこの城に蔓延はびこっていたのでしょうか?」


 やや嬉しそうに言うと、姫騎士は俺に担がれた賢者の縄を解き始める。


ねこねこ「ありがとう! オブお姉ちゃん!」


オブ「いいえ、うふふ」


 あ、この人、ねこねこに魅了されてる。え、なに、あんなことされたのにいいの? 攻められるのがお好みなの? またされたいの?


オブ「セアラ、ここでやっちゃって」

セアラ「承知いたしました」


 違った。ここで処刑する気だった。


ねこねこ「ロイオ! 助けて!」


 おんぶしてやってるんだ。ガマンしろ。

 ちょっと剣で刺されて、ちょっと血が出るだけだ。


セアラ「その罪人を渡せ」

ロイオ「ほらよ。せめて、楽に逝かせてやってくれ」

ねこねこ「裏切りものぉぉ‼」


 今までのお返しだ。俺を散々イジってたろ? たまには俺にもやらせろ。

 肩を解す俺を睨みながら、執行人に担がれたねこねこの叫びが古城に響いた。

 すると、まるでその叫びに反応するように大きな鉄の扉がひとりでに開く。


オブ「これは……どういうことでしょう?」


 姫騎士に疑問が過ったのもつかの間、扉の中から触手のようなものが姫様の腕と油断していた俺の足首を攫う。


オブ「キャッ!?」

ロイオ「な、しまったっ⁉」


 俺とオブは、城の中、暗闇へと引きずり込まれ。


 高い所から落下しているような浮遊感に見舞われるのだった。

 

 バンバンジーってこんな感じかぁ……。モロほんよりこっちの方がスリルがあっていいかもな。ファンタジー定番『触手』ってのがポイント高い。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る