第23話フラグたったよー
私がこのチビ助を担いだ瞬間、気が緩んだそのほんの一瞬で姫様が囚われてしまった。
セアラ「姫様……!」
ねこねこ「ロイオまで……」
なんということだ……。
私が油断したばかりに……姫様が……。
早くお助けせねば……。だがしかし、どうすれば……扉は壊せないだろう。かと言って他に道があるのか……。窓を壊すか……いや、あの触手に私たちまで捕まってしまう可能性がある。そうなれば姫様を救う手立てが……。
ねこねこ「お姉さん、落ち込んでる場合じゃないよ。探しに行かないと」
脱力した私の肩から降りると、このチビは城の壁に沿って歩き出した。
セアラ「どこへいく……? まさかとは思うがこの城に詳しいのか?」
ねこねこ「うる覚えだけどね。『Noah』には滅んだ国の城を探索するイベントがあって、最深部でその国のお姫様と従者の魂と出会うんだ」
セアラ「うろ覚えだ。ホントに私と同年齢なのか?」
ねこねこ「え、一七歳なの? 見かけによらず若いねー」
セアラ「貴様が言うと嫌味にしか聞こえんな」
気付けば、私の不安や焦りが消えている。このチビのおかげと思うとむしゃくしゃする私は、首を振ってその感情を払った。
ねこねこ「ロイオもたぶん気付いてる……でも、『Noah』じゃいきなり捕まるなんて分岐イベントは無かったんだ……だから、急がないと……あ、あった!」
そういうチビが額に汗を流しつつ、この城の周りをうろついて半周ほど。城の裏手で瓦礫の山を見つける。
白く細い腕でその瓦礫の一つ、二つとどかしていくチビ助。小柄な身体とはいえ……男だろうに……。見ていられないな。
セアラ「下がっていろ」
息を切らし始めたチビ助は疑問符を浮かべたが瓦礫の山から離れる。
セアラ「フッ!」
剣を振るい、瓦礫の山を斬り刻む。
瓦礫が崩れ、下敷きになっていた地下への扉が姿を見せる。
セアラ「これは……」
ねこねこ「……入口が開かなくて、四人で探したんだ。城の中に入る方法を」
地面に埋め込まれた扉を開けるとこの男は私に向き直った。
ねこねこ「『Noah』だとこの先には、大量のモンスターが徘徊してた。でもここからは道が狭くなって魔法を撃ちづらくなる……」
ばつが悪そうに俯いて口を閉ざすこの男の言いたいことが分かった私は地下への階段を下り始める。
セアラ「私は姫様の近衛だ。大量のモンスターだろうと一人戦うことになろうとも私は姫様のところへ行く」
胸に抱いた拳を握り、私は背後の賢者へ振り向く。
セアラ「お前がいてよかった。おかげで私は姫様のもとへ行ける」
最初に出会った頃のような上辺だけの笑顔ではなく、心の奥から感謝した微笑を浮かべた。
ねこねこ「……綺麗」
月光に照らされた私をぼーっと見ている賢者がそんなことを漏らす。
いつものように軽口を言わないその少年は率直にそう思ったようだった。
なにやら、恥ずかしくなった私は早足で階段を降る。
ねこねこ「いつもそんな顔してればいいのに」
やはり、一発殴ってから降りるべきだったと後悔する私。
私の後ろを緩やかな足取りでついてくるチビ助に私はさらに怒りを募らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます