第6話すいさつ

 《誓約書》

 私はこの世界で、生き抜くことをちかい、負傷、病気等で死する場合、元の世界ではなくここで埋葬されることを、望んだ。このことを、まもるため、すこしかばかり前世の力を、その身に宿すことをみとめする。



受付から貰った誓約書にはそんなことが書いてあった。

文章はおかしいが、言いたいことはわかる。

ゼウスさんとバカ山田の言う通りなら、俺たちがこの世界に来たのは偶然じゃないだろう。この誓約書が用意されてることも繋がる。

おまけに誓約書を読んで気になることがあったんだが……そのことを突っ込んだのは、意外にも山田だった。バカなのによく……おっと失礼。


山田「この前世の力ってのはなんのことだ?」


それ。だが、これに答えたのは、俺の隣で未だに拗ねているねこねこ。


ねこねこ「……『Noah』のプレイデータのことじゃない?」


山田「ま、まじかよ……で、なんでお前は機嫌悪いんだ?」


ねこねこ「べつにー……すこしってことは、完璧なコンバートは出来ないんだよね……はぁ」


こいつはたぶん、今までに集めたカワイイ衣装を惜しんでいるんだろうが……今のねこねこは男だ。例え、男の娘であっても、女物の衣装は着れまい。いや、現実だから着ようと思えば着れるか……? 

だとしても、教育上そういうことはおにいちゃん許しませんよ?

真ん前に顔を向けるとやや置いてけぼりを食らっているゼウスさんに、おにいちゃんたるこの俺が補足する。


ロイオ「受付の話からして、俺たちは『Noah』から来たってことになるらしいです」


ゼウス「ああ。それに、掲示板で俺たちがここに来ることは前もって知らされていたようだ。つまり、この世界では『Noah』から異世界人が来ることは初ではないということか?」


ロイオ「いや、むしろ逆かもしれない……初めてだから、掲示板にまで張り出したって可能性も」


山田「あー確かに。いきなり世界越えてやってきましたーって来られたら、ビックリだわな……でもだったら、なんで俺達がこの世界に来ることを知ってんだ?」


ねこねこ「とにかく、サインしちゃおうよー。話が進まない」


ぶちゃけたなー。ま、確かに、俺たちの誰一人として、元の世界に帰るつもりもないだろうし。サイン即決だわな。


ねこねこ「できた」

山田「うしっ」

ゼウス「うむ」


ロイオ「……みんな書いたな。それじゃあ、異世界で冒険者デビューするか」


ねこねこ「へへっ……なんかワクワクする」


山田「お前ら、狙うもんあんなら言ってくれ。いつでも手伝うぜ?」


ゼウス「また俺がお前たちの道を切り拓いてやろう」


一人だけえらくカッコいいんだが……?

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