第5話おとくなけいじばん
青春真っ只中の高校生がキレーなねえちゃんと話してる。めちゃくちゃ、羨ましいが、やんなきゃいけないことを片付けて置こうとする優しい精神の我ら年長者二人。
山田「なぁ、なんで日本語? こういうのって、ふつーは異世界語とかじゃないの?」
ゼウス「知らん。読めるに越したことはないだろう。文章は変だがな」
横にいるやつに訊くんじゃなかったと、後悔する俺こと山田である。でも、その通りなので、とりま読みにくいながらも目を通す。ゼウスの足を踏みながらな!
山田「ええっと……砂漠のキメラ討伐に渓流の薬草採取…………どっちも初級のクエストだな……最初の街だし、こんなもんっていえばこんなもんか」
ゼウス「……山田、どうやらそういうことではないらしい」
下のホコリを被っていない新しめの貼り紙に目を通しているゼウス。え、足踏んでんのに無反応ですかい?
疑惑顔でゼウスをチラ見してから、屈んでみる。その貼り紙にも小さく日本語の振り仮名が振られてた。
ゼウス「俺たちが来るのは事前に知られていたようだ。この紙には、異世界人がやってくるため、一部クエストの表記を変更すると書いてある。日本語なのはそのせいだ」
山田「えっと……よくわかんないんだが?」
つまり、なにか?
俺たちの異世界トラベルは、誰かの意図したことだってのか? だとしたら……どうなるんだ? わからん……。
とりあえず、なんか反応しろよ……ずっと踏んでる俺がひでぇやつみたいじゃん……。
ゼウス「この世界のことをもっと知る必要がある。ひとまず、クエストを受けるぞ」
山田「でも、俺たち武器もなんもないぜ? スキルや魔法の使い方も知らねぇし、ロイオとねこねこの意見も聞かねぇとだろ」
ゼウス「素手で十分だ」
山田「脳筋の発想こえぇ……」
こいつ、マジの目してる。
軽くびびった俺は足を退けて一歩引いた。
マジで素手で本物のモンスターと殺り合う気だ……。これだから脳筋は困る、ソロでボコスカやってた時とは状況が違うんだぞ!
ゼウス「もし、俺たちがここにいることが仕組まれたことだとしたらモタモタしているのは危険だ」
山田「でもよ、クエストを受けて
ゼウス「俺は死なん」
山田「その自信はどっからくるんよ……?」
あー、早く戻ってきてくれー。ロイオー、ねこねこー。
この頑固クソ脳筋の相手は俺じゃキツイ。三分ももたないぞー。早く助けてー。
俺の腕を握り潰すかのように掴むゼウスは
ゼウス「行くぞ、山田!」「イタイタイ!」
山田「俺は行かねぇぞ! 絶対行かねぇ! 死んだらどうすんだ!」
握られていない方の手で机の足を掴んで抵抗する。が、力は完全に脳筋の方が上だから徐々に剥がされていく。やばいやばいやばいこのままじゃ俺、この犯人面と心中しそうなんだけど! だれかマジで助けて‼ せっかく異世界ファンタジーに来たんだ! どうせなら、美少女と……エルフと心中させてくれ‼ コイツと死ぬくらいなら一人の方がマシだ! モホと勘違いされたくないんだよ俺は‼
ゼウス「俺がお前を護ってやる!」
山田「あらやだ、この人かっこいい……じゃねぇよ!」
ゼウス「武器をとれ! 挙兵だ!」
山田「武器もねぇし、兵もいねぇよ! なに将軍になりきってんだよ!」
ゼウス「行進せよ! 果ての果てまで‼」
山田「魔将軍かよ⁉ ストップストォォップ!」
ロイオーねこねこー! カムバック‼
ヘルプぅミィィィィ‼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます