第2話いせかいでニューゲーム

 レンガ造りの街並み。石橋を駆ける馬車と工事されていない街道を行き交う人々。その姿形に目を疑った。

 ゲームでしか見たことがない武装した屈強なおとこたち。

 ゲームでしか存在しない軽装備の可憐な乙女たち。

 そこは多種多様なファンタジー要素てんこ盛りの異種族が入り混じり、談笑や商売などといった穏やかな雰囲気に包まれていた。


 突如、まばゆい光に飲み込まれて降り立った大地はそんなところで。

 四人のニートは自らに起こった出来事に口を開けてぼう立ちしていたが、口々に声を発する。



ロイオ「おいおい……これってまさか」


 瞼を思いっきり見開いて周囲を見渡す茶髪の青年。


ロイオ――一八歳・高校生(不登校)。脱色した茶髪、二重の瞼、皺のついた水色ジーパン+紺パーカー。



ねこねこ「俗に言う、アレだよね⁉ アレ‼」


 興奮して赤みを帯びた幼い顔をキョロキョロと振り回した白髪の少年。


ねこねこ――一七歳・高校生(ひきこもり)。純白で少々くせのある髪、小動物のようなアーモンド形の瞳、よれよれなパジャマ。



山田「まさか……去年の初詣で願ったことが叶うなんて……‼ 新作アニメが神ってますようにってのと迷ったが、マジベストアンサーだったぜ! 去年の俺、神がかってたぜ‼」


 ガッツポーズを繰り返して自画自賛を心の底から行っている赤髪の青年。


山田――二〇歳・大学生(中退)。逆立った赤髪(染毛)、中背中肉。高校時代からの学生ジャージ上下セットが普段着。お気付きの通り、バカである。



ゼウス「……間違いない。だ」


 腕を組んで空を見上げながら断言した黒髪の青年。


ゼウス――二〇歳・社会人(無職)。長い黒髪、一重の眼、身長一八五センチの長身。裾が折れ曲がった白Yシャツと黒ズボンのだらしない恰好。



 六畳一部屋で起こった荒々しい空気感はもはやなく、むしろ――



「「「「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁあああ‼」」」」



 ニート四天王の歓喜に満ちた叫びが異世界の空に響き渡った。

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