第3話めざせギルド
普通、前触れもなく異世界にワープしたら、戸惑いや不安でいっぱいだろう。
でも、俺たちは違った。
二次元における頼もしい先人たちのおかげで、ウキウキワクワクゥゥだ。クリアな朝日が見えるまである。
山田「まずやることは、ギルドを探すことだな!」
四人の中で一番明るい(もといバカ)のまともな発言に俺は驚いたが、続けて提案するおチビに呆れてどうでもよくなった。
ねこねこ「カワイイ受付のお姉さんを見つけるんだよね?」
はぁ……と漏れそうになるため息を我慢し、一番付き合いの長いねこねこの頭へ軽くチョップして黙らせる。が、ねこねこはこっちを見ることなく、興奮で鼻息を荒くするだけだった。俺の相棒、ドМかもしれん……。
ゼウス「ギルドに掲示板があればチェックするぞ。忘れるな」
低い声でさり気なくこれからのことを決定してくれる唯一の年長者(バカを除く)に内心で感謝した。
俺たちが今置かれているこの状況……つまり異世界転移ものでは、まずどの主人公も情報を集めようとする。
俺たちは、これまでに見て読んで遊んだアニメやゲーム、漫画、ラノベに
……街の人たちに訊かないのは、単にコミュニケーション能力が不安だからです。ギルドなら、人見知りにも分け隔てなく関わってくれそうな受付嬢がいるし、ねこねこに任せれば大丈夫。うん、行き過ぎないように見張らなきゃいけないけど。
念のため、自分の中で確認する。『ギルド』とはRPGの定番要素の一つで冒険者たちにとって会社のようなものだ。人がいるところに情報あり。主人公たちは、そういう思考に基づいた上で行動しているのだろう。
街の人の物珍しいという視線を受けながらも、街道を闊歩する俺たちはこの状況を楽しんでいた。
それもそうだ。俺たち四人は社会からのはみ出し者。つまりはひきこもり。つまりは無職。つまりはニート。つまりは正義。
あ、職には就いてる。ゲームの中で(笑)
ロイオ「でも、ギルド探すのに四人いるか? 二手に分かれたほうが――」
ねこねこ「はぁ?」
山田「バカか?」
ゼウス「死ね」
ロイオ「よし、四人で固まって行動しよう。そして、誰にも喋りかけないで俺たちだけの力でギルドを探そう。そうしよう」
三人とも(なにいってんだ、こいつ)と思ってるのがわかる顔してる。
そう言えば、俺たちみんなコミュ障でしたね! 忘れてた! ロイオうっかり!
……キャラじゃねぇな、これ。
…………まあともかく。
知らない人に声をかける、そんなハイレベルなスキル(社交性やコミュ力)に
せいぜい、女限定でねこねこ、山田が会話を成立させる程度だ。俺は、コミュニケーション自体が苦手だし、ゼウスさんはそもそも他人に興味を示さない。
ねこねこ「ねぇ、あっちに大きな建物があるよー。なんか旗みたいなのもある」
少し歩いて出た十字路の正面、額に長い袖に隠れた手をくっつけたねこねこがその奥に目を凝らす。
ロイオ「どれどれ……あー、ゲームでしかみたことないけど、ギルドのシンボル的な旗じゃねぇか? なんかそんな感じの紋章っぽいのあるし」
山田「んじゃ、とりまそこいこーぜ」
ゼウス「ほかに行くところもないからな」
いやあるにはあるだろう。この人の言葉を訳すと「離れたら言語能力死ぬから固まって行動するしかない」だ。紛らわしいことこの上ない。まったく強がりボーイめ。
一応このメンバーのリーダー的ポジの俺は三人を引き連れて進みだす。後ろから何されるかわかったもんじゃないが……。
えっと……とまあ、こんな感じに俺たちの異世界生活は幕を開けた。
正直な話、不安がないと言えばウソになる。
そもそもギルドというものがこの世界にないかもしれないし、ラノベやゲームなんかの世界とは違って、死んだら即終了、コンティニュー無しの世界である可能性も捨てきれない。
おまけに転移前に天使や天の声さんから説明を受けていない俺たちは、自分にどんなことができて、どんなスキルがあるのかすらわかっていない。
いつの時代もどの世界も、二次元と同じように仲間というのは大事なんだ。
ロイオ「なぁ……お前らと一緒でよかったよ」
昔、出逢った頃を懐かしむ様に後ろの顔ぶれを見て小さく笑う。
そんな俺に同調するように、この頼もしい仲間たちはこう言った。
ねこねこ「遺言はそれでいいんだね?」
山田「墓参りは一年に一回行けたら行く」
ゼウス「南無」
…………。俺の妄想でしたね、同調なんてとんでもない。
ロイオ「死亡フラグじゃなくて、ギルドのフラグ目指そうぜ! 一級フラグ建築士さんたちよぉ!」
ねこねこ「は?」
山田「意味不」
ゼウス「
ロイオ「お前らなぁぁぁ‼」
仲間は……うん……大事、かな?
ちょっと……いやだいぶ不安のある仲間たちではあるが、これからもよろしくやっていくしかないから我慢しよう……。
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