004
「…香…港…?」
HONG KONG
「ええぇちょ、な、なんで!?なんで香港にいんの!?あ!!しまった!そんな事より通話料!ねぇこれ国際通話だから通話料やばいんじゃ…。」
「LINEで電話してんだったら通話料はかかんないっすよ。無料電話だし。」
「あ、そうなの?ならよかった。」
「…。」
…通話料はかからねぇけど、パケット通信料はかかるぜ…言わねぇけど。
「それで?何でそんな所にいるの?…まさか…誘拐されたとか…?そんなやばい仕事頼んでたっけ?」
《違ぇよ。つかそんなヘマしねぇし…ジジ=フォンファの行方を追ってたら、結局彼女の故郷である香港に到達したってだけだ。》
「ミスフォンファ?あの闇金融専門情報屋の?」
鴨居の思いがけない人物の名を聞き、今里は何かを思い出すかのように目を瞑った。
…ジジ=フォンファ。
香港人でありながら日本に10年以上滞在し、日本の闇金融会の情報を専門に売り捌いているプロの情報屋だ。
何度か今里達も情報のやり取りをした事もあり顔見知りだったが…2年前、彼女から買った情報が何かの手違いでこちらが外部に漏らしてしまった事があり、それを機に彼女の信頼を失ってしまった。
以来、ジジ=フォンファとの接触は測れず、現在に至るのだが…。
「…いや待った…話が見えないんだけど。」
《あの人の情報網は本物なんだ。橋本組の裏金について何か知ってるに違いねぇ。直接会って話を聞く。》
「おーいおいおいおい待たれよ鴨居君!!落ち着いてよ頼むからさ!確かに彼女の情報は信用出来るし、その情報量も伊達じゃないけどさ!わかってるだろ!ミスフォンファのバックには…。」
今里は、それ以上口に出来なかった。
考えただけでも目眩がする。
彼女のバックには…香港のマフィアがわんさか付いているのだ。
《要はあの人を怒らせなきゃいいんだろ?》
「いやそうじゃなくて!…いやそうなんだけど!ていうか国外に出るならまず連絡しろって何回言やわかんだよ!君のその飛行機代とかその他諸々いっつも経費で何とかしてやってんだぞ!いい加減底尽きるわ!」
「そこかよ……ん?」
今里と鴨居のやり取りを横目に作業をしていた小野崎は、事務所の扉が開いた事に気がついた。
誰かが帰ってきたのかはたまた客か、そう思い入口に目を向けると…何ともチャラチャラした茶髪男が入ってきていた。
…あ、こりゃまずい…小野崎は一瞬にして嫌な予感がした。
帰ってきたのが…あの”社内一の女誑し”だったからだ。
「あ!?今またハゲっつったか!?いい加減にしろよ…クビにすんぞこの…って、ちょっ………!?」
「…。」
ヒートアップしていた今里のスマートフォンを、茶髪男がひょいっと取り上げ、自分の耳に近づけた。
今里も、その人物を見た瞬間、思わずぎょっとしてしまった。
《クビだぁ!?んなもん社長になってから言えってんだこの童顔おと 「オイオイ冗談だろ。お前まじで香港にいる訳?」
《あぁ!?……? だ、誰だ…?》
いきなり電話の相手が変わったことに気が付き、鴨居は戸惑った。
だが確かに…聞き覚えのある声だった。
「また抜け駆けか荵!!俺に断りもなしに…そういうところが嫌いなんだよこの猪野郎が!」
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