04 待ち合わせ



 美術館にいるのは嫌いじゃない。


 無言でいても誰も咎められない。


 それどころか、それが普通であるのだから。


 明るく、笑えない自分にとって、これほど居心地の良い場所があるだろうか。


 美術館の前でそんな事を考えていたら、年下の少年が話しかけてきた。


 親戚の近藤順平君だ。


 彼は、こんな自分にも良くしてくれる優しい男の子である。

 

 家柄、色々な所へ行く機会があるので、誘ってみるとすごく喜んでくれるから、私なんかでも接し方に困らない。


 近くにいても胸が苦しくならない唯一の人だった。


 だって私面白い話とかできないから。

 すごい特技も持っていないもの。

 

「時都遅くなってごめん」


 そういって謝った彼は、急くように私の手を握った。


 迷子にならないように、という気遣いなのか、私の方が年上なのに時々子ども扱いしてくる。


 少し不思議だったけれど、嫌な気持ちにはならなかった。


「早くいこうぜ」

「うん」


 私は、彼と共に美術館へと入っていく。



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