05 少女の消失




 画家ごとに開催される展覧会やイベントもあるけど、今日は違ったらしい。


 今日、その日の美術館は、たくさんの画家の作品が集まっている場所だった。


 静かな作品も、賑やかな作品も、色鮮やかな作品も、モノクロの作品も。


 すべて一か所に集められている。


 私はそれら一つ一つに丁寧に目を通していった。


 この作家は何を思って、この画を書いたのだろう。


 この絵の具を使ったときには、どういう気持ちを込めていたのだろう。


 そんな事を想いながら。


 そうやって画を見ていくと、だんだんと不思議な気持ちになる。


 心が、別の世界に吸い寄せられていくような感じがするのだ。


 私は最初はそれが少し怖いと思っていたけれど。でも今は全然そんな気持ちにはならない。


 むしろ待ち遠しいと思うくらいだった。


 こういったことは前にもよくあった。


 両親が亡くなった後、本を読んでいると、画を見ていると時々こうなる。


 でも、今日ほどはっきりそうなった日は、たぶんなかったと思う。


 きっかけなんてない。


 大それたことが起こったわけでもない。


 おそらく、ただ、その日限界が来ただけ。


「時都!」


 私を呼びかける声が段々と遠くなっていくのも構わずに、私はその画に吸い寄せられていく。


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