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『えぇぇぇぇ!? 嘘だぁ!?』というリアクションを想像して、どうやって口を塞いでやろうかと思っていたけど、実際は全然違う訳で。
「嘘つかないでくださいよ~」
とあっさりと言われてしまう。いやいや、本当なんだって。ガチで桜小路ありあいるから。
出来上がったカクテルを斉藤君に持って行ってもらおうかと思っていると、ここでお客様が皆帰ると言うミラクル。何で? そんな漫画みたいな。
「お待たせいたしました」
お会計は斉藤君に任せて、一先ず出来上がったカクテルをサーブする。
「ジンジャー・ホット・トディでございます」
「ありがとうございます」
眼鏡の奥が楽し気に細められる。確か桜小路ありあって俺より少し年上だったはず。それなのに少女のように可愛らしく微笑むのだ。人気の理由は歌が上手いだけの魅力じゃないってわけだ。
「美味しい。ふふ、温まりますね」
「ジンジャーが入っていますからね」
「ふふふ、それだけじゃないですけれど」
「え?」
「あ、もしかしてあの子ですか? 私の大ファンだっておっしゃって下さった方」
「えぇ、そうです。とてもありあさんのファンだそうで。サインを渡したら泣いて喜んでいましたよ」
「ふふ、それは嬉しいです」
三度目の扉のベルが鳴った後、こいこいと斉藤くんを呼ぶ。彼女はなんだか悪戯っぽく笑っている。
「大きな声出さないでね」
「え?」
斉藤君は不思議そうに小首を傾げるだけだ。ふふふ、斉藤君驚くなかれ!
「ここに、桜小路ありあさんが居ます」
「えぇ~マスター嘘つかないで」
「じゃじゃーん!」
予想外にノリのいい彼女がバッと帽子と眼鏡を取り外す。
『えぇぇぇぇ!? 嘘だぁ!?』
そこに響いたのは予想通りの声と、二つの不敵な笑みだった。
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