第9話 勇者とは


 しかしまぁ、不思議な感覚だ。

 最適化されたであろう行動を無意識

の内に取ってしまうから、視界に違和感がある。

 まるで映像を見ているようで慣れない。


 これは時間が解決してくれるであろう。


 となれば次は回復魔法の実験をすべきだと思う。

 恐らく人体生成を使えばいい感じで練習ができるであろう。

 へ?倫理的な問題?

 バレなきゃ犯罪じゃないって某邪神も言ってたじゃないですか。


 検証するのはメサイアだけでいいかな取り合えず、どうせ消費1なのだからヒールとか使う意味ないしね。


「【人体生成】」


 イメージするのは人間の、特に何の印象も与えないような顔立ちの青年。


 さて、実験の始まりだ。


―――勇者パーティー視点―――

「勇者様、明日の正午、管理神様の使いが参りますが心の準備は出来ていますか?」

「何が来ようとも、戦力になるなら何も変わらないだろ」

「とても貴方らしいですがくれぐれも敵に回すことは無きよう、お願い申し上げます。」

「わかってるよ王女様」


 このやり取りを遠巻きに見つめながら賢者と聖女が談笑している。


「管理神が使いをこのパーティーに入れろなどとは全く予想外でしたな聖女様」

「このパーティーに不足があっただっけの事、神は私達を確かに心配されている。私達は神に愛されているのです。」


「しかし使いとはポジションはどこなのであろうか」

「今の私達に足りないものは前衛

、主にタンクです。しかし現実を見ない限り何も言えないのも確か。明日を待ちましょう」


 この聖女、狂信的かと思いきや現実主義者のようで、この中で一番現情を把握している。

 聖女が後ろから現状を判断し、賢者がその感覚を共有して戦闘の指示を出す。二人で一人の参謀なのだ。

 正直な話、勇者と王女がいなければ間合いを詰められて即敗北なのだが、そこは後衛ということで。


 正直な話、使いがいなくても十分に充実したパーティーなのである。


―――そして翌日近衛目線―――


 昨日からぶっ通しで検証を続け、いくつか解ったことが幾つかある。


 なんとメサイア、頭髪や薄皮、爪や血液などからでも蘇生できるらしい。

 ただし、本体のHPが0になっていないと蘇生も何もないのだが。

 それはもうにょきっと髪から生えてくる。胴体が。

 久し振りに面白いものが見れた気がする。


 そして2つ目、なんと、職業の隠しスキルなのか、ヒーラーでは敵味方関係なく体力がわかるようになり、処刑人の方では人の犯罪歴が表示される。


 システム君の話によると、職業固有のステータスに表示されない技能と言うらしく、レベルが上がるに連れてその感覚は強くなっていくらしい。

 例えばヒーラーLv.999、残りの体力の他に、どこで何をし、どこで傷を負ったかなど、事細かに詳しくログが表示される。

 有り体に言うとその者の過去が見えるのだ。これなんてチート。

 まぁ、犯人探しとかに役立つかな?


 それはそれとして、管理神の加護を賜ったおかげでロリ神様といつでもどこでも交信できるようになった訳だが、何とも便利なスキルだ。


「なぁロリ神様、勇者ってどんな奴なの?」

「武人かの...自分の感情よりも戦闘への優位性だけで物事を決める奴じゃの」

「ふむ。」


 ひねくれ者じゃないなら良かった。どうやら上手くことを進められそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Lv.999のヒーラーは自分の職業を忘れる 風来猫 七昼 @Izayoi_nabiru_kureha_1126

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ