第2話 贈物

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そこはかとなく漂うブラック労働臭、

院生のケイはバイトに励む。

好きじゃなきゃ、やっていられないよね。

それもなんだかだまされている気はするけれど。




起床。

ギリギリまで脳負荷を回復させるよう、

モーニングコールは家を出る15分前。


着替えもそこそこに、鏡の前にたち、

寝癖を簡単にととのえる



すれちがう人がはっとするような長いまつげと大きな黒い瞳


それよりさらに深い黒髪は天然にわずかなウェーブし


ちょっと低めの鼻と細身の輪郭


細く長い四肢は力強さに欠けるか



男としてコンプレックスを感じるほどではないが、

この時代の容姿としてはおそらく及第程度だろう。


今のケイをかたちづくる形質。

もし気に入らなければ、換える手段があるとは言え、

簡単には気が進まない。



ギフト・セラピー


生まれる前に、子供が受け継ぐ形質を、

わずかながら介入できるようになり、

出産をめぐる環境は様相を変えた



バース・リセットと、

それに続き社会問題となったリセット・マラソン


元気に生まれてくれればそれでよし、

そんな前世紀の親たちの共通の合言葉は自然消滅した。



少子化を加速させる一因となったともいわれるが、

あとづけの理由にも感じる。


もっと根本的な方向転換は、

前世紀にはとっくに始まっていたのだろう。



まん延する不寛容。



「しかし、うちの親もノンポリだからなぁ」

そのおかげで、この世にうまれてきたのだから、

これ以上の文句もない。


国内のいわゆる同級生にあたるのは9万人強との統計をみて、

これといって特に思うことはない。

もう少し労働人口がいると助かるのになぁ、

バイト続きの身にはそれくらいの感覚。


鏡面台に置かれているボトルガムの容器から、

トラベリンを1錠取りだす。


口の中で吸収を待つのも面倒で、

奥歯でガリガリやって飲み込んでしまう。


時空酔いを避けるための予防内服。


正直なところ、偽薬<プラセボ>と大差ない臨床データに思うが、

あの酔いを一度経験して以来、

飲まないほどの勇気はもてない。


「あー、それじゃいってきます。」

コンシェルジュ端末に声をかけ、

車庫へと向かった。

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タイムリープ・インシデントレポート あにのおとうと @anioto

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