第4話 3話まで説明とか、入り込みにくいんだよ!

 3話まで説明とか、入り込みにくいんだよ!

 と言わんばかりに飛び出したレーヴは、人間界――太陽系第三惑星地球、日本国のとある地方都市へと降り立っていた。

 都市の名は、湯芽奈市(ゆめなし)。人口30万人ほどが住まう、都市圏のベッドタウンとしての役割を果たす街だ。

 古くは温泉街として名を馳せていたが、今は地名にその名が残るのみ。人々の中からも温泉の二文字が消えて随分と経つ。

「なんだよー、温泉街といや大人の風呂場じゃねーのかよ」

 レーヴは街で一番高いビルの屋上で周囲を見渡した。が、辺りは一面、開発された街のそれ。想像していたような色町の風景はどこにも無い。

「どうせなら飛田に行きゃ良かったか」

 大阪にある料亭街の名を呟きながら、レーヴはポケットからスマホを取り出す。小柄なレーヴの手の平から僅かにはみ出るスマホは、サイズが五インチ。格安スマホとして近年淫夢族にも利用者が爆発的に増えている機種のひとつだった。

「さて、と。とりえずどっか採用してくれそうなとこねーかなっと」

 慣れた手つきでグーグル先生に「湯芽奈市 風俗」と入力する。

「…………いっぱいありすぎてわかんねぇ」

 しばらく画面を眺めたレーヴは、画面をそっと閉じた。

「つってもなー。街中で声かけるのも、何かビッチぽいしなぁ」

 深夜にもなれば酔っ払いのひとりやふたり、簡単に引っかけられるだろう。一発ヤらせて、精を絞りとって任務完了。

 ――といかないのが、この業界の辛いところである。

 淫夢族は人間と寄り添うべし。

 勢いで飛び出してしまったレーヴだが、社是を守るだけの正気はまだあった。

「つってもこの体じゃなぁ」

 ちんまりとした少年の体。一部にウケがすこぶる良いだろうが、人間社会ではいろいろとアウトだ。それくらい、アダルトサイトを見ていればわかる。お気に入りの動画が世の中から消えていき、xvideosすらもその痕跡が……。

 レーヴにとって由々しき自体だ。もはや、淫夢族専用の格安モバイル『淫夢MOBILE』の定額アダルトサービスしか供給源が残っていない。

「ちくしょー、今に見てろ。合法ショタの底力、見せてやる……!」

 意気込むレーヴの元へ、一件のメールが届く。

「げ、トラム……またお説教かよ」

 とはいえ、見ないのも何だか逃げたようで癪だ。

 嫌々ながらメールを開いたレーヴだったが、

「――お、おおおおおお!」

 その内容に、雄叫びを上げた。


「襲える相手、イタ――――――――――――――――ッ!!」


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