第37話 『差異』
目下一番の問題は「『
これまで感じた『差異』とかその影響について、ちょっと真面目に考えてみることにする。
まず、リリスの町でうっかりタキに遭遇してしまったこと。
あれはそこまで重大な差異じゃないと思う。
何故なら、本来出会うはずの、あの盗賊の根城での出来事はきちんと起こったからだ。多少のイレギュラーは起こったし、
ついでにあの村でのジアスの手出しもだ。放り出された場所はともかく、他はそこまで問題じゃない。結果的に『呪』の綻びを強化されたのは歓迎できないことだけれど、致命的ではないのでひとまずおいておく。
ただ、あれをきっかけに表面化(?)したレアルードの過保護――恐らく『依存』とか『執着』に近い――は問題……というか不可解だ。
いくら思い返しても、レアルードがあんなふうに
『繰り返し』の分要領よく立ち回れるようになってはいたものの、『前回』と比べて劇的に変わるような何かはなかった。
……ただ、気にかかるのは、シーファの『夢』に関して、レアルードが何かを知っているらしいということ。
血の色の声の夢から覚めた
つまりレアルードは、そういう思考に至る程度には、『例の夢』について知っているのだ。そこに何か、原因があるのかもしれない。
……肝心の
多分、あの血の色の声(というか言葉というか)が関わっているんじゃないかとは思うんだけど――あれとまた接触するのはごめんだ。タイミングよくレアルードが起こしてくれなかったらどうなっていたか……考えるのも怖い。
でもまぁ、レアルードの過保護については、時間が経てば落ち着く部類のもののようなので、今は置いておいてもいいだろう。旅を放棄するレベルにさえならなければ、それほど問題はないはずだ。
『シュウ』――『シウメリク』が『シウメイリア』だったことには驚いたけれど、あれは旅には影響はない。『シウメリク』と『シウメイリア』の立場がそっくり入れ替わっただけのようだから、『これまで』にはなかった大きな変化ではあっても、『道筋』に影響はない。
『これまで』との大きな差異と言えば、タキに『世界干渉力』があることもそうだろう。
そのことをタキ自身が自覚してないから、今のところは影響はないだろうけど――『ジアス・アルレイド』が何を思ってそうしたのか……それによっては、大きく『道筋』が変わることもあるかもしれない。
『ジアス・アルレイド』が関わり方を変えてきたのは、放っておくわけにはいかない変化だ。だけど、それに対して何ができるかと言ったら、正直今の私では何もできない。
元々、旅の序盤はあえて力を制限するのが常だったし、制限してなくとも『世界干渉力』を使いこなせるようになったジアス相手だと分が悪い。力の強さは
……多少願望が混じってはいるものの、ジアスが決定的に
少なくとも――『魔王の眷属』ではあっても、純粋な『魔王』の手駒ではない。
だから、今手は出せなくとも、取り返しのつかないことにはならないだろう。ジアスが何をどうしたいのか――それを推測するための情報は、旅を続けるうちに自然と集まる。
行動を起こすのは、それからでも遅くはないはずだ。
ジアスが『
『
……恐らく、それは遠い昔、エルフ達が為した世界への働きかけ――その一部を妨害することだ。
『道筋』の中、これだけはなぞらねばならないと『記憶』が訴えかける――そういう出来事が、起こらなくなるようなこと。
だけど、その妨害そのものを未然に防ぐのは不可能に近い。エルフ達がいつか来たる未来のために用意したのは『強制イベント』だ。こちらがどうこうするのではなくて、条件が揃えば強制的に進むイベント。
異常を――『記憶』があるが故に分かる異常を察知して初めて、その介入を知ることができる。後手に回らざるを得ないのだ。
『強制イベント』に手を出してくるとしたら、『ジアス・アルレイド』の可能性が高い。だからジアスの目的を探っていれば自ずとどういう行動を起こすかもわかるだろうけれど、どちらにしても後手に回るのには変わりない。
……こう考えるとつくづく、『エルフの末裔としてそれとなく勇者を導いていく』役割っていうのは勝手が悪いと思う。
こう感じるのは、『繰り返し』が起こってしまったからなんだろうけど。
……そんなふうにひたすら思考に没頭していたのが、一縷の望みをかけた休憩終了後の主張もむなしく、再びレアルードにお姫様抱っこ状態で運ばれる羽目になったことからの逃避だというのは――丸ごと認めたくないと思っても許されるんじゃないだろうか。きっと許されるよね、うん……。
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