第8話
「お疲れやったな。それにしても、もうここに居るとは早う片付いたんか」
「さすがお頭、よう解ってはる。渡海屋だけでは、こちらも何処に網をはっていいもんか考えておったんです。片っ端から聴いてやろと心積もりして・・・取りあえず身支度をしょうとこちらに寄らしてもらったら」
「向こうから来よったか」
「ご名答。何気もなく、そ奴らは話しておりました。国許からの便りで人が訪ねて来ると聞いてたが誰も来ん。江戸の渡海屋と言う店にその事を尋ねなあかんと大鹿屋さんに飛脚を頼みに来よりました。お頭みたいに中身が見れたらよろしいんやけど・・・で、その後そ奴らの方に集中出来たんで、以外に早うに事がわかったと言う事です」
「まぁ、俺にも見えんがな・・・西の方か・・・」
「どうやら島津のお殿様が、八咫の鏡を狙っておられるようです。で、後ろで糸を引いているのが渡海屋。西に行きますか、江戸に出ますか。どうします」
皆が、八咫の顔をじっと見る。
「・・・江戸にでる」
「よかったあ。薩摩って言われたらどうしょうかと思うた」
「ああ、薩摩はいやかあ」
「そりゃあ、お江戸の方が華があって・・・」
二口が続きを言おうとするのを後ろからキクが、口を押さえて
「いややなあ。そんな事ないですよ。俺らは、お頭の行くとこなら何処でもええですよって・・・なぁ、二口」
「・・・ああ、そうですよ。俺も、ほんとにお頭の側やったら何処でもええです」
「うむ。まぁええは、明日はここを発って江戸に行く」
八咫は、代々八咫の鏡を持つ者で一族の長となる。そして八咫の代替わりと共に八咫に使える者がその時に決められる。それを世話役と言い、それは本人達の好き嫌いに関係するものではなく決められる。二口や他の者達も皆、八咫の世話役と言う役にある。世話役になった者は、八咫の意の中にあって生きる事が出来る。裏切れば、命はそこで尽きる。
普通の主従の関係以上に強くて切れない関係である。それは、八咫との契約と言うよりも八咫の鏡との契約であった。互いに違えることの出来ないやり取りがそこにある。
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