第4話

「どうします。探り入れますか」

「うーん、まぁええやろ。ほっとこ、また向こうから何かあったらその時な・・・」

八咫は、呟きながらキクと二口と一緒にそこらに散った亡骸を片付け出した。

「なんでこんなに、汚れてんねん」

「しょうないやろ、乙ねいが、けっこう怒ってたからな」

八咫は、ぼそぼそ二人が話しているのを聴きながら片付けている。もう綺麗になったかと男達の躯が落ちていた所を眺めていると、眼玉が一つ落ちていた。

「おっ、残ってるやないか」

八咫の眼は、時に自分の意図しない所で意図せぬものを見せてくる。それは瞼を閉じていようが、眼帯をしていようが変わりはない。

拾い上げた目の玉を通して見みたのは顎に黒子のある男。火の海を前にして立つ男の姿と、労うように動く男の手・・・目玉が見ていた記憶だろうか、異様な視界はそこで途絶えた。火の前に立つ男は、あの日にみた男の影と重なった。

「みんな、集まってくれるか」

一気に八咫の様子がかわると、それに気付いた仲間四人がすぐにそこに控えた。

「芳一、直ぐに京に行け。おち合う先は、大鹿屋」

「京にて、渡海屋のこと聴いて参ります」

芳一は応えると次の瞬間、その姿を消した。

長きに渡って江戸を中心としたものが壊れて、京に日本中の情報が集まる時代になってきた。八咫の知りたい事も京の地にあるかも知れない。

「キクは、島の内に、もう他所もんが残っておらんか嗅いでこい。二口は、明日から島を空けると島のもんに知らせてまわれ。乙は、すまんが儂と一緒にもうちょっと、ここの片付けを手伝うてくれ」

言うが早いか短く返事を返したキクと二口は、それぞれに島の風下、風上へと姿を消したそしてそれを見送った時には、八咫も何時も通りにもどっていた。

「乙、何時も悪いな。片付けばっかり手伝わす」

「お頭いややは、そんな事言わんといて・・・うちは、力が強いだけで他に能があらへんから少しでも役に立てて嬉しいんで」

「そうか。乙の怪力にはいつも助かってるんやけどな・・・あっ、婆さんはどうした」

「たづ婆ちゃんは、家まで送ってきました」

乙は、しゃべりながら大八車に菰を引いて用意をすると、そこらに転がっている躯を丁寧に拾って行く、八咫も同じように散らばった首を集めて大八車に載せて行く。大方載せ終わるころには、荷台はいっぱいになっていた。

「お頭、いつも通り竜穴の中に収めたらええですか」

「おう、頼むわ。お、ちょっと待って。全部で十人はおったな」

荷台をざっと確認して、周りを見回して

「大丈夫そうやし、頼む」

「はい、はい。行ってきます」

乙は、一人で大八車を引いて森の中に消えて行った。納屋から箒を持ち出して掃き掃除をしだした頃に、キクが戻って来た。

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