第3話

三人で話している間に、芳一が残っていた二人の男の首を撥ねていた。

「お頭、終わったで」

「ああ、ご苦労さん」

「なんやねん。もう終わったん お頭、でこいつら何処の奴等なん」

「・・・息してる奴おるかぁ?」

「・・・」

「おらんわなぁ」

「うち、たづ婆ちゃんの様子見て来るわ」

「あぁ、俺は、飲み直してくる」

「ええ、芳一さんって・・・なぁ、お頭大丈夫かなぁ」

「・・・」

俯いてぶつぶつと言い出す。頭の機嫌を取らなければ又大変なことになる。頭の八咫の悪い癖だ。普段は冷静沈着な性格で頭も切れるが、何かの拍子ですぐに落ち込む。もともと過剰に自己評価が低い。それで死ぬ事は無いのだが、命がけの無茶をしたり、戦闘中であろうが蹲って動かなくなる。このご機嫌とりに失敗すると・・・何が起こるかわからない。

「俺には、荷が重いわ」

と一人呟くと、坂道を上がってくる人影が見えた。肩に何か担いでいる。

「キク、そこにおんのは、キクやろ。重いねん手伝ってくれ」

「えっ、重いのは、責任が重いって事や、それやないやん。って、それなんやのん」

「えー キクがちゃんとしてへんから、こいつらに逃げられたんやろ」

「あっ、さっきの奴等か。なぁ なぁ 息あるのん、そいつ等」

二口は、何気に担いでいる者を投げ捨て、さも重い荷物を降ろしてほっとしたように肩をまわした。

「多分、一人は息あるんとちゃうかな」

その声が聞こえたのか、今までそこで蹲って動かなかった八咫が立ち上がった。

「お頭・・・」

「二口、手伝え」

「・・・はい」

いつもは透かして、人を馬鹿にしたように接する二口も八咫には、素直に従う。目でキクにどうしたんと訴えながら横たわる男を支えて座らせる。

「黒幕が、知りたい。問うてくれ」

「・・・よう来たな。ここはあの世に近い神さんのおわす場所や。ぬしの命も もう、ここが詰まりや。この世のしがらみは、全部まとめて置いて行け」

男の眼がぼんやりと八咫を見ている。二口が、もう一度たずねた。

「ぬしに問う。ここに導いた者は、何処の者じゃ」

「江戸の渡海屋・・・」

虚ろの目が一瞬、正気に戻り言葉を発してそのまま光を消していき、躯となった。

「お疲れやったな。もう誰も起さん、そのまま静かに寝てな」

二口は、男の身体を横にすると八咫に訊ねた。

「渡海屋、聞いた事ありませんよね」

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