第2話
そんななかを何事もなかったように四人が近づいて来る。打ってかかることも逃げ出すことも出来ずにいる中、男達の一人が
「相手は、丸腰で酒も入っている。人数もこちらが優位、打って出るしかあるまい」
大声で周りの者に声をかけると、手近な影に切りかかった。影はその動きを読んでいるかのようにひょいと軽く避けると
「芳一、頼むわ」
「お頭、自分でしてくださいよ」
男は、そう言いながらも懐に手をやって次の瞬間一閃、先程大声をあげた男の首に、細身の刃物を深々と突き刺さした。。囲んでいた男達の輪がじわりと緩む。芳一と呼ばれた男は、額に簪を突き立てた男の屍の側によるとその腰から刀を抜き取った。二、三度振ると柄を握り直して泰然とそこに立った。その横でお頭と呼ばれた四人のうちで一番小柄な男は、細身の男の耳元に何かを囁く。
「お頭、かまへんの」
「ええよ。少しは減るやろ。いちいち面倒くさいやん。やってみぃ。」
お頭と言われた男が笑っている。
「・・・わかった。俺、二口やないけど前からやってみたかってん一人に付き銀一粒やで」
キクは、一瞬 顔を伏せたかと思うと、低く太い声で一喝した。
「戯けども、ここは神域なるぞ。立ち去らぬ者は、身をもって知るがよい」
男達がざわざわとしているが、抜け出して逃げる者はいない。
「残念やな。キク、なかなか二口みたいにはいかんな」
「あー、しょうもな。今度は、びっくりしてもらいますよって」
「そうやな、で神罰やないが、ここにおる者の命はないで。生きたい者は、ここを退け」
「お頭、殺てええんか」
「おぅ、もう止めん」
芳一の影が揺らぐと音もなく男が倒れた。その途端そこにいた男が二人、腰が引けて逃げ出した。
「お頭、銀二粒は俺のやな」
「ええで、芳一」
「あと何人おるん。俺も殺る」
「あと・・・四人ほどやろ」
キクが、懐に手を入れて身構えると、背後からそこに大きな岩が宙を飛んで、二人の男の頭を割った。
「乙ねい、何してんのん。俺が今から・・・」
振り返って文句を言おうとして、絶句した。そこには、美しい顔を怒りに震わす女の着物を羽織った・・・上背のある男が、一人。
「なんやねん。乙、どうしたん。何怒ってんのん」
「お頭、聞いて。あんなぁ たづ婆、怪我してんねん。可哀そうやろ」
「そら、可哀そうやな」
「なんやねん。ほんで、ばあさんは?」
「こんなんに、巻き込まれたら大変やん。屋敷の中に置いてきた」
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