エピローグ

199

 ―十二世紀、ロイド公爵の城―


 十一月、バルカン半島に住む民が暴動を起こし、吸血鬼狩りを始めた。


「ロイド公爵を殺せ!」

「ロイド一族を殺せ!」


 民は杭や銃を手に、ロイド公爵の城を襲ったが、すでにロイド公爵も一族も旅立ったあとだった。


◇◇


 ――城の地下室――


 俺達は棺のふたを開ける。


「セバスティ、本当にいいのか?」


「俺はジョエル様にお仕えするが務め。ジョエル様が何処に行かれてもお伴致します」


「ありがとう。心強いよ。もう一度、イチに逢いイチの命を救う」


「はい、わかっております」


「イチはが愛した女だ。この手で守ってみせる」


「はい、二人を死なせたりはしません」


「セバスティ、俺はお前も死なせはしないよ。日本にタイムスリップし、平成の世とやらで人間や家畜を殺めたヴァンパイアがいたとしても、正体を突き止め退治する。戦国の世にヴァンパイアを蔓延させないためにもな」


「ヴァンパイアの俺達が吸血鬼退治ですか?ジョエル様らしいですね。城の外が騒々しい。民が押し寄せたみたいです」


「上手くタイムスリップ出来なければ、俺達はここで死ぬことになる。セバスティ覚悟はいいな!」


「はい、必ず未来の日本へタイムスリップしてみせます」


 俺達は棺のふたを閉め、民が襲いに来るのを待った。


 ヴァンパイアは全てこの地から逃がした。即ち日本の未来にタイムスリップするヴァンパイアは、俺達以外にはいないはずだ。万が一、民の中に紛れ込んでいたとしても、必ずや退治してみせる。


 城には火が放たれ、焦臭い匂いが地下室に充満する。ゴォーゴォーと燃え盛る炎が魔物のように蠢く。


 棺のふたが開き、頭上をパチパチと火の粉が舞う。


 ――次の瞬間、勢いよく杭が振り上げられた……。

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