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◇◇
―平成二十三年冬―
北海道知床半島。
深夜、一人の女性が投身自殺をした。
浜辺で遺体は見つかり死因は溺死だった。警察は自殺で処理したが、女性の首には二つの傷痕があった。
◇◇
―平成二十四年春―
人里離れた山頂に聳え立つ白亜の洋館。
時刻は午後七時四十分。
「ジョエル様、そろそろ洞窟に参りましょう」
「いよいよだな。やっと……逢える」
この地に来て、すでに一年以上の時が経過した。
もう一人の俺から、この国で起こった様々なことを詳細に聞いていたセバスティとともに、ずっとこの時を待っていた。
―この地に来たのは一年前の冬―
バルカン半島に住んでいた俺達は、十二世紀、吸血鬼狩りと称する民の手により、心臓に杭を打たれる瞬間、目の前が突如暗黒に包まれ気を失い、気が付いたらこの地に堕ちていた。
――全て、俺達の計画通り。
この地に上手くタイムスリップすることが出来た。
ただひとつ、悔やむとすれば不幸な事件を阻止することができなかったことだ。
俺達が危険を犯してまでこの地に来たのには、目的がある。俺達と共にタイムスリップし、この地に蔓延るヴァンパイアを退治するため、そして最も重要な目的は……。
――イチ……
お前の命を救うため。
バイクに乗り、俺達は屋敷から海岸に向かう。海岸に面した洞窟は、俺達がタイムスリップし堕ちた場所だ。
――暫くすると……
俺達の目の前に、きらびやかな着物を身につけた、美しき姫君の姿が現れた。
暗い洞窟の中で、その姿は宝石の如くキラキラと輝いている。
俺はセバスティと顔を見合せ微笑む。姫君に近づき抱き上げた。
「イチ……やっと逢えたな」
気を失っているイチを抱き上げ、その
イチの閉じられた瞼が……
ゆっくりと……開いた。
――たとえこの身が灰になったとしても……
俺は何度でも君に愛を誓うだろう。
「そなたは……」
「俺の名は、ジョエルだ」
――時を超え、時空を超え……
俺は……
何度でも君に……逢いに来る。
――君を
~後篇 Endless love 完~
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