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 イチを吸血するために、ジョエルの屋敷の床下に潜んでいた美薗は、春乃により放たれた炎にジョエル共々包まれる。逃げ場を失った美薗は時空の波にのみ込まれ、ジョエルやイチと共に平成の世から、戦国の世にタイムスリップしていた。


 織田家の姫君であるイチとは異なり、お金も住みかもない美薗は、夜な夜な遊女として武士の生き血を吸う。吸血鬼となった武士は妻や側室達を次々と吸血鬼に変えた。


 戦国の世の女性とは異なる美薗の華やかさと艶っぽさ、未来を予言し的中させる能力に、吸血鬼達はやがて美薗を姫君とあがめるようになった。


 美薗はイチが織田信長の妹、お市の方様だと知り、月足らずで生まれた茶々姫がジョエルの娘であると確信した。


 イチの娘、茶々姫はダンピール。即ち吸血鬼の敵。抹殺するしかない。さもなければいずれ自分の身も脅かされる。


 人斬りと騒がれ、城下の吸血鬼を殺す男はジョエルに違いない。ジョエルは自分と同じ吸血鬼。同族を殺めるなんて許せない。


 美薗は織田家臣を次々と吸血鬼に変え、お花を襲わせ、我が手下にし茶々の命を狙うが、一度目も二度目も未遂に終わる。


 茶々は歴史書通り、豊臣秀吉の側室となった。


 茶々を殺すには、徳川家康の力が必要。その徳川家臣を次々と吸血鬼にし、周囲を固め、いずれ自分も城に乗り込む手筈を整えた。


 ――すでに……

 吸血鬼とダンピールの戦いの幕は上がっていたのだ……。

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