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「茶々姫の父はジョエル、人の生き血を吸う吸血鬼じゃ。ダンピールも死ねば吸血鬼になる運命!その命、我が手で終わらせてしんぜよう!」


 お花の刀と茶々の小刀が、激しく交わり金属音が響く。そして、お花の胸を茶々の小刀が一突きした。


 茶々は笛を吹き、城内へ危険を知らせる。小刀を引き抜くと血が吹き出し、全身に返り血を浴びた。


 それはまるで……

 赤い血に染まる鬼。


「茶々姫様、ご無事で!」


「この者を燃やすのじゃ、土葬してはならぬ、よいな。この城や城下に魔物が蔓延っている。吸血鬼退治をするのじゃ!一人たりとも逃すでないぞ!」


 茶々は吸血鬼を見抜く力が生まれつき備わっていた。茶々の一言で、吸血鬼となった侍や侍女は次々と殺傷され遺体は燃やされた。


 ――翌、天正十七年――

 “茶々はすて(鶴松)を産み、山城国淀城を秀吉から賜り、以降『淀の方』と呼ばれるようになった。”


 鶴松はお花の予言した通り、天正十九年に死亡。しかし、“淀の方は文禄二年捨ひろいまる(秀頼)を産み、秀吉の死後は豊臣氏家政の実権を握った。”


 ◇


 ――大阪城下――


「お兄さん、わちきと遊ばない?」


 赤い着物を着た美しき遊女。夜の闇に身を潜め、武士を誘う。


 徳川家家臣は遊女と知りつつその美しい容姿に、ついふらふらと女に着いて行く。


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