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「ジョエル様!危ない!」
イチを抱き上げたまま、俺は振り返る。俺達の背後には片腕を無くしたブラムの姿。胸からは血が滴り落ちる。
生き絶えたはずのブラムが、胸から刀を引き抜き床に放り投げ、俺の背後で鋭い牙を向いた。
胸からは血が噴き出す。次の瞬間、シューッと音がし、ブラムの頭と体が二つに斬り裂かれ、無残な遺体が転がった。
ブラムの背後には、もう一人の俺が刀を手に立っていた。
「ジョエル、セバスティ、ルーマニアへ旅立ったのでは!?」
「ブラム様が群れからいなくなり、不吉な予感がし引き返しました。ですが……手遅れだったようですね……。ジョエル様……イチ様が……」
セバスティは変わり果てたイチの姿に涙した。
俺は人間としての死を迎えたイチを抱き、地下室のドアに向かう。
「ジョエル様、どうなさるおつもりですか。地下室を出るのは危険です。もう朝陽が昇り始めている。棺の中へお戻り下さい!」
「セバスティ、お前はそこにいるジョエルと生き延びるがいい。同じ時代にジョエルは二人必要ないからな」
「ジョエル様!」
もう一人のジョエルが俺の肩を掴んだ。
「待て、ジョエル。お前はどうするつもりだ。姫君はもうすぐヴァンパイアとして新たな息を吹き返す。同族として共に生きればいいだろう」
「いや……それは出来ないよ。イチをヴァンパイアにするわけにはいかない」
俺はイチに視線を向ける。抱き上げていたイチが苦しそうにうめき声を上げ、微かに瞼を開いた。
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