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棺のふたに赤い生地が挟まっていた。その生地は、イチが着ていたドレスの色によく似ていた。
不吉な予感がし、俺は棺を開ける。棺の中には胸の上で両手を組んだイチの姿……!?
「イチ……!イチ……!」
イチの顔は蒼白で、首筋には二つの牙の痕……。
「イチー……!!誰だ!誰がイチを……!隠れていないで出てこい!」
地下室の天井から飛膜の音がした。バサバサと鳴る飛膜。
大蝙蝠だ。
黒い飛膜には茶が混ざっている。
「ブラム……」
「俺に感謝するがいい。ジョエル、イチを我ら一族に加えてやったのだ。イチも息を吹き返せばヴァンパイアだ。美しき異国の姫君の生き血は、格別の味がしたぞ。ふははは」
俺の体は怒りに震え涙が滲む。持っていた刀を鞘から抜き、天井を飛び交う大蝙蝠を斬りつける。
片方の飛膜を斬り落とされた大蝙蝠は、叫び声を上げ地下室の床に落ち、バサバサと片方の飛膜をばたつかせた。
「例え一族でも、決して許さぬ!!」
俺は両手で刀を握り、大蝙蝠の心臓に刃を突き立てた。大蝙蝠はブラムの姿へと変わる。ブラムの胸には刀が突き刺さったままだ。
俺は赤い血を流し床に横たわるブラムに背を向け、棺で眠るイチを抱き上げた。
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