black 10
ジョエルside
190
客室に潜んでいた俺は、城の窓から両親や同族の旅立ちを見送る。
この時代に生きる自分と遭遇した俺は、時空の歪みが起きはしないかと不安だった。
同じ時代にジョエルが二人存在してはならない。時空の歪みが生じたなら、どちらかの俺は消滅してしまうだろう……。
――皆が旅立ったのに、イチはどれだけ待っても部屋には戻らなかった。
何故だ……?
まさか……もう一人の俺がイチを連れ去ったのか!?
「イチー!イチー……」
俺は客室を出て城の中を走り回る。広い城の中にある何十もの部屋のドアを次々と開け放つ。
「イチ……一体何処に……」
城の前にはセバスティが用意した馬車。
馬車の中には誰もいない。
イチは……
この城の中に、まだいるはずだ。
寝室に戻り、ベッドの下に隠した刀を取り出し、召し使いの部屋や物置小屋に至るまで探したが、イチの姿はなかった。
この時代に、俺は必要ないということなのか……。
夜空が白くなり始め、夜明けが近い。太陽が昇ると、俺は生きられない。イチの消息が気になりながらも、地下室のドアを開ける。
俺の棺の隣に用意させたイチの棺……。
イチの棺は使用したことがない為、棺のふたはいつも閉まっている。
――ふと棺に目を向けると……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます