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「俺も必ず逃げ延びますから、ジョエル様もイチ様も必ず逃げて下さいね」


「わかった」


 ――俺達はこの地から逃げるための手筈を整える。両親に吸血鬼退治の暴動が起きると断言し、ルーマニアに逃げ延びるように伝えた。


「ルーマニアだと?ジョエルと姫君も行くのか?」


「はい、俺は行きますが、イチは足手纏いになるゆえ、他の地に逃がします」


「足手纏い?なぜだ」


「はい、イチはまだ上手く大蝙蝠に変身出来ぬゆえ、遠距離の飛行も慣れておりません。馬車にて他の国に身を隠し、身の振り方が落ち着けば迎えに行きます」


「確かに、姫君はヴァンパイアになったばかり、大蝙蝠の姿でルーマニアまで飛ぶのは、まだ無理かもしれないな」


「はい、今は一刻を争う事態、まずはお父様とお母様のお命が大切かと」


「ふむ、セバスティの魔術さえあれば、どこでも暮らせていけるであろう。セバスティ、召し使いや近隣に住む同族に伝えるがよい。旅立ちの準備だ」


「はい」


 ――それから二日後、東ローマ帝国ギリシャに渡っていたジョエルと、数名の召し使いが深夜帰国した。


 俺とイチは客室に身を隠す。セバスティは城に着く前にジョエルの一行を出迎え、皆に魔術を掛ける。記憶を操りずっと城にいたように摩り替えた。


 ――だが……

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