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「美しき姫君に、目を奪われてしまいました。ジョエルの婚約者でなければ、この俺が拐ってしまいたいくらいだ」
ブラムはわたくしに顔を近付けた。わたくしは思わず首を竦める。
「怖がらなくていい。俺は同族、ヴァンパイアだ。人間ではない」
「……ヴァンパイア」
ブラムはわたくしの匂いを嗅ぎ、クンクンと鼻を鳴らす。その口からは鋭い牙が見えた。
「人間の匂いがする。人間を吸血したのか?」
「……は、はい」
「そうか、人間の血はうまいからな。永遠の命を手に入れ、人間では味わえぬ快楽も手に入れ、ヴァンパイアも悪くはないだろう?」
「……は、はい」
「しかし……なんと馨しいよい匂いだ。人間の生き血の匂い」
「これは、ブラム。どうしてここに」
ジョエルの声に、わたくしは安堵する。ジョエルの血色はよく、元気を取り戻していた。
「ジョエルが東ローマ
「ブラム!」
ブラムは両手を上げ、降参と言わんばかりに苦笑した。
「ジョエルの婚約者を、横取りしたりはしないよ。伯父様や伯母様はもうご帰宅かな?」
「今戻ったところだ」
「ではご挨拶するとしよう」
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