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「わかりました。わたくしは……ジョエルが吸血鬼でも、怖くはありませぬ。わたくしは……ジョエルを……」
「愛しているよ。イチは同族にはしない。俺がどんなことをしても守って見せる。日中誰が訪ねて来ても城の中に入れてはならない。民衆は我がロイド一族を疑い始めている。いいね」
「はい、畏まりました」
その日から、わたくしは人間でありながら、ジョエルの言い付けを守り城の中では吸血鬼の振りをした。
わたくしの傍には、ジョエルとセバスティが常に寄り添い、わたくしを守ってくれた。
「姫君、一緒に狩りに行きませんか?」
「狩りでございますか?」
ロイド公爵に狩りに誘われ、わたくしは思わず『はい』と応えそうになる。
「お父様、イチを人間狩りなどに誘わないで下さい」
「人間!?」
わたくしは思わず悲鳴をあげそうになった。
「イチには十分な生き血を与えてあります。人間狩りなど必要ありません」
「確かに姫君は人間の血の匂いがする。それに血色のよい紅き唇をしておる。だが、毎日城の中にいては、退屈であろうと思ってな。最近は晩餐にも顔を見せないし、カトリーヌも心配しているぞ」
「イチの心配は無用。イチはいずれ俺の妻になる女です。二人きりで過ごすが幸せ」
「ほう、いずれ妻にとな?それは楽しみだな」
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