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茶々は……
間違いなく、ジョエルとわたくしの娘。わたくしが殿方と情を交わしたのは、ジョエルが初めてだった。
ダンピール……それは吸血鬼の敵?
人間ではない、魔物?
ジョエルに問いただし、本当のことを聞きたいが、聞くことが怖い。
愛しき娘が、魔物であるならば……わたくしは生きてはいけぬ。
歴史書に書かれていた事が、全てまことであるならば、茶々は天正十六年、あの憎き秀吉の側室となる。
『この世はいずれ我らが支配する』
『吸血鬼の敵は生かしてはおけぬ!いずれ殺めるのみ』
――『いずれ殺めるのみ』
秀吉の子をなす茶々の命を狙う者が、山城国淀城に潜んでいるとしたら……。
戦国の世を離れ、違う時代、違う国へとタイムスリップしたわたくしには、どうしてやることも出来ない。
このことは、わたくしだけの胸におさめておく。ジョエルに真実は言ってはならない。
親子でありながら、敵同士になるなど、そんな残酷な話は伝えることは出来ぬ。
「イチ、俺達ヴァンパイアは昼間は地下室の棺で眠る。イチの棺は俺の隣に用意させるが、イチは眠らなくていいからな。みんなが棺で眠っている間、この部屋で過ごすがいい」
「そんなことをして、大丈夫でしょうか?」
「陽が沈むまで誰も目覚めたりはしないから、大丈夫だよ」
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