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「いや、最後まで聞いて欲しい。俺のことを全部知って欲しいんだ。毎夜繰り返されるパーティー。人間の生き血を吸い同族を増やす。その結果、バルカン半島にヴァンパイアが蔓延し、他国にも広がった。
十一月、民が気づいたんだ。厄の元は我が父、ロイド公爵だと。そして残された人間達が暴動を起こし、吸血鬼狩りが行われた」
俺はイチの隣に座り、華奢な肩を引き寄せた。
「両親は胸に杭を打たれ、召し使いは銃で心臓を撃ち抜かれ殺された。民は屋敷に火を放ち、俺とセバスティは杭を打たれる寸前、日本にタイムスリップしたんだ」
イチは困惑しながらも、潤んだ眼差しを俺に向けた。
「あの時……後悔したんだよ。両親を救えず自分だけ生き長らえたことを」
「ジョエル……」
「でも今は後悔していない。タイムスリップしたから、俺は日本でイチと出逢えた」
イチは泣きながら俺に抱き着いた。
「これは運命だ。俺達が何度もタイムスリップしたのは、必ず意味がある。俺は両親を救う。たとえ醜いヴァンパイアでも、両親を民に殺させたりはしない。いつか人間の心を取り戻してくれると信じているからだ。そしてセバスティも……」
「セバスティも……」
「暴動が起きる前に、みんなをこの城から逃がす」
「わたくしも協力いたします」
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