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 俺達は洋服に着替え、城の一階にある大広間に入る。天井には薄明かりのシャンデリア。広いテーブルの上座で両親は生き血の色をした赤ワインを飲んでいた。


 俺がイチを同伴すると、両親も召し使いも驚いたように目を見開いた。


「ジョエル、東ローマ帝国ギリシャに旅立ったはずでは?」


「はい、美しき姫と出逢い、引き返しました」


「美しき姫?」


「お父様、お母様、紹介します。日本の姫君、イチです」


「異国の姫君がどうしてこの地に?」


「船が漂流し、辿り着いたようです」


「ほぅ、姫君一人で?お付きの者は誰もいないのか?」


「お付きの者は、全員船上で亡くなったそうです」


「それは大変であったな。それで、ジョエル、姫君は……」


「勿論、同族でございます。イチは俺のもの。例え両親と言えども、触れてはなりません」


「くははは、これは愉快だな。異国の姫を同族に?ジョエルの玩具に触れたりはせぬ。さぁ姫君、こちらへお座りなされ。ワインを一緒に飲もうではありませんか」


「……はじめまして。イチでございます。ふつつかものですが、宜しくお願いいたします」


「イチ様、さぁこちらへ」


「……セ、セバスティ」


 イチは目を丸くし、セバスティを見つめている。

 

 驚くのも無理はない。セバスティは日本で灰となり死んでしまったのだから。


 ジョエルに案内され、イチは緊張した面持ちで、母の前に座った。


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