167
「やっと全てを思い出したみたいだね。ここはヨーロッパ、俺の祖国だ。この城には俺達家族と三十人の召し使いが住んでいる。父はサクソン ロイド公爵。母はカトリーヌ ロイド。晩餐でイチを紹介するから、そのドレスに着替えて」
「ジョエル、わたくしはまだ何がどうなったのか、混乱しておりまする。茶々や姫達は……」
「三人の姫君はきっと無事だ。詳しいことは、晩餐のあとでゆっくり話すよ」
「はい」
「イチ、ひとつだけ守って欲しいことがある」
「何でございますか?」
「この城には、吸血鬼しかいない。イチが人間だと知れると、血に餓えた吸血鬼に襲われかねない。だからイチも吸血鬼の振りをするんだ。いいね」
「な、なんと……!?このわたくしが吸血鬼!?」
「大きな声を出すな。召し使いに聞かれてしまうだろう。イチが人間だということを知っているのは、俺とセバスティだけだ」
「セバスティが……生きているのですか!?」
「ああ、俺達が吸血鬼狩りにあいタイムスリスリップしたのは十一月だからな」
「……吸血鬼狩り」
「この時代にはもう一人俺がいる。半年近く東ローマ
「セバスティが……!?」
「イチ、急いで着替えて。ドレスの着方は、平成の世で教えたからわかるよね?」
「はい」
俺は羽織袴を脱ぎ、刀をベッドの下に隠した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます